前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「本多!」今のはデリカシーがない。

事情を知っているだろ、と強く諌めるエビくんに、「分かっているさ」でも気持ちはまだお互いに宿ってるじゃんかよ、アジくんが眉根を寄せる。

「誰がどう見ても相思相愛じゃんか。言動は目立っていたけどお似合いにカップルだったじゃんかよ」

やや昂ぶった感情を見せるアジくんに俺は微苦笑した。


「ありがとうアジくん。そう言ってくれるのは嬉しいや」
 

だけど俺じゃ無理だったんだ。俺じゃ。

当事者同士は望んでいなくても、相手方のご両親に頼まれたからにはもう、戻るわけにもいわかない。

未練がましく引き摺っておいてなんだけど、終わったんだよ。俺と先輩は。

俺の言葉に、「なんかよ」先輩の両親もすっげぇ勝手だよな、アジくんが毒づく。


「娘と別れろ。けど良き友人として娘を支えてくれ。空にそう頼むなんて、全部向こうのエゴじゃんかよ。空の気持ちも竹之内先輩の気持ちも無視している。
簡単に割り切れるような関係じゃないって、大人なら少し考えれば分かるだろっ。

結局向こうの言い分に縛られているだけじゃんか、お前」

 
「本多。もうやめなよ。空くんが困っているから」


感情的になっているアジくんにエビくんが落ち着けと宥めた。

酸素を体内に取り入れて一息つくアジくんは、間を置いてごめんと俺に詫びてくる。

言い過ぎたとぶっきら棒に後頭部を掻く男前に、俺は一笑して気にしていないと返事した。

アジくんは俺のことを親身に心配してくれているんだよな。

彼の気持ちは分かっている。


「帰ろう」


家に帰ってまたテスト勉強をしなきゃ、今は目の前の問題に取り掛かるべきだとフライト兄弟に微笑んで俺は昇降口に向かって歩き出す。

さっさと前に進んで歩いていると、フライト兄弟がついて来ていないことに気付き、俺は立ち止まって振り返った。


「んじゃあ、破局した俺を慰めてくれよ。俺、イチゴミルクオレが飲みたい」
 

やりきれない面持ちを作っていたフライト兄弟のうち、先に微苦笑を零したのはエビくんだった。