前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「あ、そういえば空くん。バイトの方はどうなの? 稼げてる?」


空気に耐えかねたエビくんがバイトの話題を俺に振ってきた。

「そうだよ。バイトはどうなんだ?」

アジくんも話に乗っかってきた。

このまま沈黙になるよりかはマシだと思って俺はその話に便乗する。


「バイトはまずまずだよ。稼げているかって聞かれたら、うーん、月四万だしな。正確には三万と九千。もう少し稼ぎたいところなんだけど」

「へえ、お前。バイト始めたのか?」


背後から声が掛かった。

首を捻って俺は頷く。

「生活苦しいんっすよ」だから土日だけ喫茶店でバイトをしていると返事すると、「空がバイトか」意味深に鈴理先輩が独り言を呟いた。


「喫茶店でバイト。喫茶店といえばウエイトレス。ウエイトレスといえば制服。制服といえばロングスカート。スカートいえば女装。
はぁああっ、きっとお帰りなさいご主人様とか言ってにゃんにゃんなんだろうな。にゃんにゃんな空。ふっ…、萌え。

……、だが今のあたしはにゃんにゃんな大雅っ。
もういい! 大雅、あんた、女装しろ!」


「おまっ…、突拍子もなく乱心すんじゃねえよ! しかも言ってることが無茶苦茶だぜ?!」


「あんたはあたしの婚約者だろ! 今のあたしはなっ、あたしはなっ、攻め不足っ…、ウワァアアアア大雅なんて掘られてしまえば良いのだ! どーせ兄貴ラブ畜生なんだぁああ!」

 
女装をしてくれない大雅先輩は所詮、宇津木ワールドの住人なんだと嘆いて踵返しBダッシュ。

「はぁああ!」ちょ、何処に行くんだよ! 廊下を駆け出す鈴理先輩の後を追って大雅先輩もBダッシュ。
 

前方を歩いていた俺達は足を止め、いつまでも三点リーダーを醸し出していた。

鈴理先輩が壊れた。てか、久しぶりに見た。

先輩のあたし様。あの様子じゃ相当攻め不足なんだろうな。

攻めてナンボの人生って鈴理先輩言ってたし……、大雅先輩が受け身男になるとも思えない。欲求不満なのかも、鈴理先輩。
 

取り敢えず訂正したい箇所が三つ。

俺はウエイトレスではなくウエイターです。
制服は統一されているためメイド服ではありません。

なによりメイドカフェで働いていません。


俺でなあに妄想したんっすか。

にゃんにゃんな俺って……、ははっ、キショイ。


吐息をつく俺に、「二階堂先輩。苦労してるね」エビくんが気遣いを見せる。

直後ズバッとアジくんが言った。


「空。よりを戻したほうがいいんじゃないか?」と。