本格的なテスト期間に入った。
図書室の利用数は多くなり、閉館時間八時まで残って勉強する生徒が増える。
俺もその一人だったし、フライト兄弟も度々その一員になる。
俺に付き合って八時まで残った日にはアジくんがへろへろで、もう駄目だ。テスト無理。留年する節が毎度のように唱えられていた。
嘆くアジくんにエビくんはいい加減耳にタコができそうだと呆れていたし、俺は始終苦笑。
一方で俺の集中はかなりの割合で勉強に注がれていた。
生活がかかっているというのも勿論あるけど、何より俺の中で勉強を逃避手段としていたんだ。
何故なら閉館時間まで残って勉強している生徒の中に鈴理先輩がいると知っていたから。
最初は気のせいだって思っていたけど、彼女は二日、三日に一回図書室に足を運んでテスト勉強に勤しんでいる。
それに気付いてしまったら最後、俺は何が何でも勉強から目を放すわけにはいかなかった。
これもう意地と言っても過言じゃない。
とにかく教科書から目を放したくなかった。
一つでも英単語を頭に叩き込みたかったし、数学の公式を使っていつまでも数式を解いていたかった。
それだけ俺は鈴理先輩に気を持っていかれそうになったんだ。
一ヶ月経った今でも、変化することのない自分の感情には笑止ものだと思った。
しかも俺の気を削ぐことに、大雅先輩が近くにいたりするんだよな。複雑な気持ちだ。
そりゃ相手のことは認めているし、先輩としては好きだけど、どっかで嫉視する俺がいる。
感情の変化が訪れていないせいだろう。
顔を合わせたら挨拶はするものの、なんとなく距離を置きたくなる。
良き友人への道のりは遠いようだ。
そうやって片隅で悩んでいると神様が意地の悪い試練をお与え下さるのか。
ある日、図書室を退室する際、先輩二人と顔を合わせてしまう。
幸いなことにフライト兄弟が一緒だったけど、空気が見事に凍てついたね。
少なくとも大雅先輩とフライト兄弟が。
「よお」手を挙げてくれる大雅先輩に、「お疲れ様です」俺は微笑して会釈。
鈴理先輩にも同じ挨拶をして、俺はフライト兄弟と図書室を出た。
とはいえ靴を履き替えるため、目的地は同じだから必然と先輩二人が後ろに付く形になるのは言うまでもないだろう。
おかげさまで前後間に妙な空気が流れた。
俺達元カレカノのせいだって分かっていたけど、この空気を打破する術が分からないからダンマリ。友人達もダンマリ。向こうの婚約者もダンマリ。みーんなダンマリ。
結果、沈黙となった。



