前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



変わった日常、戻った日常、戻らない日常。
 

複雑に交差していく生活の中で俺は時間を過ごしていく。


些少の変化はあれど、俺の人生の節目において大きく変わったことはない。

鈴理先輩とはギクシャクでも、俺の恋敵というべき大雅先輩や本当の意味で先輩の宇津木先輩や川島先輩とは喋られる。


ほんっと人間って単純なようで複雑な生き物だよな。

割り切って人生を生きてきたら、どれだけ楽なことか。
 
 

(あ。鈴理先輩だ。大雅先輩と帰るってことは、今日も二人で会合に出るのかな)
 
 

向かっている正門の外に元カノと大雅先輩の姿を見つけ、つい目で追ってしまう。

もう俺には関係ないって分かってはいても、今日も会合なのかな。財閥の令嬢令息は大変だなって思う俺がいた。

それは同情であったり、隣に立てない憂いであったり、彼女の隣に立てる大雅先輩を嫉視したり。


そんな自分に自己嫌悪交じりの苦笑を零すこともまちまちだ。

女々しいったらありゃしない。


変に避けても向こうに気付かれてしまうだけだと思ったから、俺は平常心を保って正門を潜った。


迎えの車を待つ婚約者カップルが視界に映ったし、前を通らないといけなかったから会釈して横切る。

大雅先輩は軽く挨拶を返してくれたけど、鈴理先輩は無言だった。


代わりに視線が飛んできたからけど、それを受信することはできない。


俺があの二人に深入りすることはもう二度とないしできないから。


婚約者カップルの気配を背中で感じながら角を曲がり帰路を辿っていると、側にある道路に黒光りしている車が停車した。


それは背後で迎えを待っているカップルの車ではなく、別の目的を持った車。
 

下車してきた見知った人物に俺は呆気取られる。


「連絡をしたら迎えに来てくれ」


そう言って扉を閉めた学ラン男装プリンセスは、よっと手をあげてきた。

よっとつられて手をあげる俺は、こんなところで何をしているのだと尋ねた。

破顔する御堂先輩は俺に歩んだと思ったら、「さて行くか」人を軽々肩に担ぎ上げてきた。

ギョッと驚く俺を無視して、御堂先輩はさっさと早足で歩き出す。


え、何がどうしたら行くかで担がれて歩き出すんっすか?!

ちょ、おろして下さいよ!