やっぱり前言撤回していいっすか?
なーんて言いたかったし無理だとヘタレたかったけど、これで最後だと思うと羞恥より欲が勝った。
ええいっ、自分から言ったんだ。
これくらい腹括らないと本当に俺は乙女になる。いや乙男(オツオトコ)だ!
「失礼しますっす」
おずおずと相手に擦り寄って、いつもとは正反対のポジションを陣取る。
俺の中の勇気をフル稼動させて新雪のような白い肌を吸って痕を残した。
とはいえ、一度目は失敗(先輩に笑われた。大ショック!)。
二度目にして赤い痕が付く。
最後にして、ちょっとだけ先輩の気持ちが分かった。
どうしていつも俺に痕を付けるのか、その意味が。
ほんの少しでいい。
先輩が証を付けたように、俺も証を付けておきたかった。
その痕が付いている間だけは、俺が貴方を独占していた。気持ちを込めて。
最後に触れるだけのキスを交わして俺達の行為は本当に終わりを迎える。
ボタンを留める先輩は、「永久に残っておけばいいな」痕を付けられたことに少しだけ笑みを零した。
幸せそうな笑み、こんなことならもう少し早くに実行して置けばよかったと後悔してやまない。
俺も先輩に倣ってボタンを留めて、取られたネクタイを締めなおす。
ダンマリになることで校舎側から生徒達の喧しい声が聞こえてきた。
何処かの部生が声だしをしているようだ。合唱部だろうか。
吹き抜けるそよ風を頬で感じ、俺は彼女に微笑んだ。
「行って下さい。大雅先輩が待っています」
俺の言葉に、「空。あたしは」先輩が何かを俺に告げようとした。
それが何かは分からなかった。
言葉は中途半端なところで途切れてしまったのだから。
それによって気まずい空気が流れたから、俺から切り出す。
借りている携帯についてだ。
別れた以上、俺が彼女の行為に甘んじることは許せない。だからすぐにでも返そうと思った。
でも許してくれなかったのは先輩だった。
「あんたが持っとけ」
これは先輩命令だと告げられてしまう。
こんなところで先輩命令とか卑怯だなよな。
ちぇっ、後輩の立場がないじゃないか。
何を言っても許してくれなさそうだったから、借りた携帯は俺が所持しておくことにする。



