爆ぜそうな寂しい気持ちを抱きながら学院生活を送っていたある日の放課後。
俺は四日ぶりに鈴理先輩の姿を見た。
偶然にも昇降口で彼女の姿を見かけたんだ。
今から帰宅しようとしているのか、靴を履き替えている。
びっくらした。
彼女が能面に近い表情をしていたから。
彼女の傍には大雅先輩がいるんだけど、妙に困った面持ちを作っている。
「なあ鈴理」
少しは飯食えよ、と気遣いの言葉を掛けている大雅先輩に無反応。
どうやら婚約式以来、あまり食事をしていないようだ。
そういえば若干、表情が宜しくないような…、俺も食事が喉を通っていない方だけど、まだ食事はできている方だし。
ええいっ、先輩、ちゃんと食事はして下さいよ。
そう言いたかったけど、果たして今の俺にそれを言う資格があるのだろうか。
いやこれは資格とかそういう問題じゃないよな。
「そうだ」
俺は鞄を開けて、中から未開封のイチゴミルクオレを取り出す。
これはフライト兄弟が奢ってくれたものだ。
二人とも優しいから連チャンでこれを奢ってくれるんだよ。
毎日飲んでも飽きないんだけど、しゃーないから今日の分は譲ってあげよう。一後輩として。
押し付けかもしれないし、メーワクかもしれないけど、これは俺達が友人の関係を踏み出す一歩だ。
「す・ず・り、センッパイ!」
向こうにいる彼女の名前を呼ぶと、向こうが過剰反応した。声で誰か分かったみたいだ。
「食らいやがれっす!」
持っていた紙パックを相手に投げる。
緩やかな放物線を描いてそれは先輩の手中におさまった。
「空…」真ん丸お月さんの目で俺を見つめてくる彼女に、「食べられる有り難味を知りなさいっす」それくらいなら胃に入れられるでしょ、と笑顔を向けた。
うん、大丈夫、俺は笑える。彼女の前だと普通に笑える。
例えこの後、迷惑だと言われて毒づかれたとしても、俺は笑って受け流せる自信があった。男の見栄ってやつかもしれない。
痛みを知った分、傷付けた先輩には優しくしたい。



