前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



再び訪れる沈黙。

無言で肯定を示すと、「本当に?」エビくんが念を押して聞いてくる。

嘘を言ってもしょうがないじゃないか。

苦笑いを浮かべると、二人からかなり気まずそうな顔をされた。


そういう顔を見たくなくて、「釣り合わなかったんだって」俺は肩を竦めてみせる。

口調は明るめに。
 

そんなことないと斬り捨てたのはアジくんだ。

学院一噂の立つカップルだったじゃないか。


異色だったけど、睦ましい仲だっただろ。

なんで別れる必要があったんだよ。


そう熱弁してくれる男前くんに俺は、ありがとうと礼を言う。

そんな風に思ってくれるのは嬉しいよ。本当に。


でも駄目だったんだ、俺と鈴理先輩は。

せめて身分がなかったら良かったんだけど。


納得していない面持ちを作るアジくんや客観的に聞いてくれるエビくんが目で説明を求めてきたから、俺は説明することにした。

許婚の件や婚約式のこと、別れ話の一件を。どうせ隠していても後でばれることだ。


「結局身分の差ってやつかな」


好きって気持ちだけじゃ通らないこともあったんだと、二人に告げ、俺は空になったカップにお茶を注ぎ足す。
 

情けないことに語尾が震えてしまった。

説明している内に昨日の記憶がまざまざと蘇ってくる。やっべぇ、もう泣けないって。
 

……グズッ、泣かないんだからチクショウ。

破局がなんだっ、俺にとっちゃあまだまだ長い人生の内の小さな出来事にしかっ。

嘘、めっちゃショックな出来事だった。目の前真っ暗になりそうでした。
 

やっぱり立ち直っていないようで、俺はズーンと落ち込んでしまう。

気を落ち着けるためにお茶を胃袋に流し込むんだけど、ちっとも晴れてくれない。

焼け爛れたような痛みが胸をじゅくじゅくと化膿させていくようにさえ思える。


いつかこの傷も完治する日が来るんだろうか?


「みずくさいじゃないか」


と、アジくんがいきなり俺の背中を叩き、そうならそうと言ってくれよ! 声音を張ってきた。

びっくらこく俺に、「うっしゃ奢っちゃる!」イチゴミルクオレでも、チョコでも、なんでもこい! 万円以上のものだって掛かって来いだとアジくんが胸を叩いた。

「俺と笹野が奢るから!」

空は好きなものを食えばいい。物でもいいぞ! とか男前なことをのたまってくれる。

「万円はちょっと」

エビくんが溜息をついた。
でも、彼も俺に奢ってくれるみたい。


ポンッと肩に手を置いて一笑してくる。