「あっれ、珍しい。空、学食堂に行かなくていいのか?」
昼休み。
教室で黙々と弁当を食っていると、売店から戻って来たアジくんとエビくんに声を掛けられた。
両者俺が教室で弁当を食っていることにすこぶる驚いている。
それもそうだ。
いつもなら学食堂で先輩達と昼食を取っているのだから。
曖昧に笑い、「今日は行かないよ」と返事する。
「なんだよ。彼女と痴話喧嘩でもしたのか?」
潮らしい俺の態度にアジくんが面白いネタを見つけたような眼を飛ばしてきた。
人の不幸はなんとやらみたい。
エビくんも相談に乗ってあげるよ、と建前は言ってくれるけど目はネタ提供を寄越せといっている。
あまり触れられたくない話題なんだけど、日頃の行いが祟っているらしく(俺と鈴理先輩ってべったりだったもんな)、話を聞かせろよと口を揃えてきた。
幸い、今日の俺は昨日の俺と違って元気に振舞えているらしい。
これも御堂先輩のおかげなのかも、俺は心中で彼女に感謝した。
ダンマリになる俺の空気がちょっとおかしいと気付いたのか、「マジ喧嘩?」アジくんがおずおず聞いてくる。
喧嘩、そういや鈴理先輩と喧嘩していたな。
俺の中では破局の方がでかかったから、引っ叩かれたことなんて念頭にも無かったや。
仲直りできる機会があればいいけど、今はきっと会えないだろう。俺も、先輩も。
もやしが詰まっている弁当を半分も平らげられず、俺はそれに蓋をした。
箸を箸入れに戻して水筒に手を伸ばす。
合間に答えた。
「別れたんだ」と。
沈黙。
フリーズするフライト兄弟は、まさしく冷凍フライト兄弟になっていた。
口を開けて呆けるアジくんとエビくん。
先に息を吹き返したアジくんは、「じょ。冗談」お前等に限ってそれはないだろ、と男前な笑顔を向けてくる。
ズズッと茶を啜る俺は相手を一瞥して視線をカップに戻した。



