目で笑う御堂先輩は、「君はうそつきだからな」放っておけなかったんだと肩を竦める。

式場に来た時から泣きそうだったぞ、額を指で弾かれて俺は目を見開いた。

嘘でしょ、だって俺、ちゃんと笑顔を作っていたと思うんだけど。
 

「僕の目は誤魔化せなかったな」
 

僕の勝ちだと彼女は一笑した。
 
恍惚に彼女を見つめていると、「それに僕は君が思うほど」良い人でもないんだ、と視線を返される。

それはどういう意味なんだろう。


こんなにも良くしてくれているのに。


含みある笑いを浮かべるプリンセスに意図を聞くと、

「隙あらばってやつだ」

僕は君の傷心につけ込もうとしている、飄々と彼女は答えた。
 

コンビニ敷地内に車が入って来た。

店の前でアイスを食べている俺達を車のライトが照らし出す。
 

驚きを露にする俺は、どうにか思考を回して食べかけのアイスに齧りつく。

それって遠まわし遠まわし、俺を好いているって伝えているよな。


反応に困っていると、「僕は簡単に男を慰めてはやらない」自分の認めた男しか優しくしてやらないのだと御堂先輩は強く言い放った。

「君のこと」

最初こそ小生意気な年下だと思ったさ。

初対面で説教されたのだから、と彼女は思い出話を始めた。
 

「だけど何故だろうな、その説教の中に確かな気持ちがあった。僕の心を動かす、何かが」


そして次に心を動かしたのが、君が会場を抜け出しロビーで思案に耽っていた姿を見た時だ。

あの時、君は鈴理と大雅の関係を気遣い、行く末に不安を抱いていた。

そう、今日の君のように泣きそうな顔をしていたんだ。

表向きはそうじゃないかもしれなかったが、僕にはそう見えた。


よくよく君と話してみれば許婚のことを配慮しているじゃないか。

君はうそつきだと思った。
本当は誰より許婚という関係が不安なくせに。


豊福はしごく受け身だが、陰では彼女を守ろうとする男なんだろう。

鈴理に気付かせず、財閥と庶民の立場。許婚の件。身分に対して真剣に考えていた。僕はその姿になんというか君は守ってやりたくなる衝動に駆られた。


一目惚れといえばそれまで。

無償に君を守りたくなったんだ。

付け加えて、君が女に男ポジションを譲っている優しさを知っている。もう君しかいないと思った。