反射的に受け取ってしまった俺は、アイスと先輩を見比べてしまう。

自分の分をさっさと開封する彼女は、これが大好きなんだと教えてくれた。

きなこアイスは絶品も絶品、中に餅が入ってなお美味しい。


それまでコンビニに行かないけれど、これに出逢って度々足を運ぶようになったんだって。


「夕飯は食べたがこれは別腹だ」


アイスにかぶりつく御堂先輩が早くしないと溶けてしまうぞ、と促してくる。

言われたとおり、封を開けて俺は棒アイスを取り出すとそれに齧りついた。

泣きすぎて鼻が詰まっているけど、なんとなく味は分かる。


とても甘味の強いアイスだった。

何処となく安心できる甘さだった。
 

美味しいと呟けば、「だろ?」なんたって僕のお気に入りなんだから、得意げに言う彼女はまた一口アイスにかぶりつく。
 

俺は先輩の優しさを察して綻んだ。御堂先輩、俺の破局を慰めてくれているんだな。

先輩たちの前では絶対に笑顔を貫こうと思ったのに、御堂先輩の前じゃそれが通らなかった。

こんなこと鈴理先輩以外にはありえなかったのに。

元カノになっちまった鈴理先輩もまた、かつて俺の虚勢を見破って弱い心を抱き締めてくれた人だった。
二人目だ、俺の弱い心を見破って抱き締めてくれた人は。


しゃり。

アイスを頬張る俺は鈴理先輩のことを想ってしまい、軽くかぶりを振る。

駄目だ、今鈴理先輩のことを思ったらまた泣きそう。

女々しいって分かっているけど、それだけ好きだったんだってまじで。逃げてばっかりだったけど彼女のことは大好きだった。


微かにアイスがしょっぱく感じる。俺の味覚がおかしくなったのかな。


ぼんやりと思考に耽っていた俺だけど、こうして付き添ってくれる御堂先輩を思い出し、彼女に視線を流して再度お礼を告げた。

本当に御堂先輩には感謝している。

だって彼女がいなかったら俺、どっかで溜めていた気持ちを爆発させて、それこそ沈鬱になっていた。そうに違いない。