目を白黒させていた鈴理は、すぐさま踵返した。
戻らなければいけないと思ったのだ。
暴言を吐き、引っ叩いてしまった彼にすぐさま謝らないといけないと思った。
しかし大雅がそれを制した。
「何故邪魔をする」
眉根を寄せる鈴理に、
「今はそっとしてやれ」
豊福も好きな女の前じゃカッコつけたかったんだよ、彼は意味深に泣き笑いする。
伝染したように泣き顔を作って、「自分のことで頭がいっぱいで」空のことをちゃんと考えてやれなかった。引っ叩いてしまったと後悔を口にした。
「玲の言うとおり、空は孤独だったに違いない。
ワケも分からず招待状が来て、婚約式だと知って…っ、カッコ悪いな。あいつの不安、気付くことさえできなかった。玲に言われるまで気付けなかった」
「熱くなっちまってたんだ。しゃーねぇ。豊福も分かっていて、わざとお前に言った節がある。お互い様だ」
「何がお互い様だ。一方的にあたしが悪いではないか」
涙声になる許婚、否、婚約者の頭を撫で、大雅はしゃーないから胸を貸してやると彼女を抱擁する。
「ちなみに有料だからな」
冗談を言ってやるも相手から反応はなく、黙って顔を押し付けてくるだけ。
後でメイク直ししとけよ、そう言って大雅はいつまでも鈴理の頭を撫でたのだった。



