「平然とした顔で別れ話を切り出せる軽い関係だったのかと君は憤っているようだが、君こそ、あいつを簡単に罵って突き飛ばせる軽い関係だったのかい? 違うだろ?」
君は豊福に本気だった。
おなじようにあいつだって君に本気だったんじゃないのか。
嫉妬してしまうくらいにっ、豊福は君を想っていたよ。
好きなくせに君に不安を見せないようにしたり、好きなくせに許婚を優先したり、好きなくせにうそつきになって自分の気持ちを隠したり。
全部君への愛情の表れなんじゃないか? 鈴理。
敢えて君を怒らせる選択肢を取っても豊福にメリットなんてない。
けれど選択した。
本当に君が好きだからしたんじゃないか?
「何故、君は守ると言った豊福の気持ちを、愛情を、気付いてやれないんだッ。一番近くにいたくせにっ、不安の一欠けらも気付いてやらないんだっ」
何もいえなくなる鈴理に対し、「幸せな頭だな」何も気付けない君の頭は本当に幸せだ、皮肉って玲は鼻を鳴らす。
「だから言っただろっ…、さっさと許婚は白紙にしろと。本当に傷付くのは君じゃなく、豊福だと。あんなに助言してやったのに。
―――…もういい、僕が彼を貰う。あいつは僕が幸せにする。君とはいい勝負ができそうだと思ったが残念だよ」
暴言に近い言葉を吐き、玲は会場とは別の方向へと歩き出す。
振り返ると彼女の一つに結った長い髪が視界に飛び込んできた。
邪魔だとばかりに鈴理の後を追って来た大雅を押しのける彼女は、早足でその場を去ってしまう。



