こっそりこそこそ移動した俺達は、人気のない廊下まで移動して足を止める。
沈黙が下りている空気が重いったらありゃしない。
鈴理先輩は沸騰したヤカンみたいに怒りがカンカンだし、大雅先輩は気まずそうにあさっての方向を見ているし、俺は俺でなんて話題を切り出そうか悩むし。
でも言いだしっぺは俺だから、とりあえず社交辞令としてお祝いの言葉を送った。
ギッと鈴理先輩に睨まれたから、
「建前っすよ」
まだちゃんと言ってなかったでしょ、と溜息を零す。
ツンとそっぽ向いてしまう鈴理先輩のご機嫌斜めさには早々白旗を振りたくなった。
大雅先輩が嘆く筈だこりゃ。
何から言えばいいか分からないけど、このまま沈黙に戻るのも気まずい。
二人は主役だからあまり会場をあけておくのも宜しくないだろう。
「最近忙しいって言ってましたよね。先輩方…、忙しいってその、このことだったんっすね」
きっと先輩達のことだから俺に気を遣ってくれていたと思うっす。
最近様子が変だなって思っていたんっすよ。
なんか余所余所しいし、何処か疲れているみたいだし。
気付かなかった俺って馬鹿だと思うっす。
すみません、気遣わせてしまって。
あ、謝罪はいらないっす。
俺も気付かなかったですし、先輩達も陰ですっげぇ努力していたんだと思います。
寧ろお礼を言わなきゃいけません。
俺は本当に後輩思いな先輩方を持ったと思うっす。
―――…だから今度は俺の番っす。
こんなにもしてもらったんっすから、俺も何か先輩達にしたい。
とても考えました。
考えて考えて考えて、先輩のお父さんとも話して、ひとつの結論に辿り着きました。お二人の婚約式を見届けようって。
「俺は鈴理先輩も大雅先輩も好きっす。できることなら、傷付けたくない人達っす。これから先、お二人は財閥を背負って生きないといけないっ…、令息令嬢っす。そのためにどうしても俺の存在は邪魔になる。
……もう、言いたいこと、分かりますよね?」



