「わたくし達も両親の急な取り決めには反対でした。けれど、父も母も聞く耳を持たなくて」
真衣さんが眉根を下げる。
きっとそれは鈴理先輩が前に話してくれたM&Aが一理、噛んでいるんだろうな。
俺には分からない世界だけど、経済面でちとばかし財閥界が揺れたって言っていたし。
複雑なんだな、お金持ちの世界も。
いつまでも財閥の栄光が続くとも限らない。
これからもお金持ちであるために、必死なんだろう。
姉妹達と会話を終えた俺は、今しばらく食事を堪能。
腹八分を感じた頃、お手洗いに言ってくると先輩達に告げて俺は会場を出た。
トイレで用を足し颯爽と会場に爪先を向けていたんだけど、途中で人と鉢合わせになったため、俺は足を止めることになる。
「来てくれたんだな」
そう言って会釈してくるのは鈴理先輩のお父さん。英也さんだ。
「お招き頂きありがとうございました」
俺なりに丁寧な言葉を使って挨拶をする。
人の好い笑顔を作る英也さんは、俺の前に立つと開口二番に礼を告げてきた。
何故なら彼こそ俺を招待した張本人なのだから。
俺の肩に手を置いて、本当にありがとうと一笑してくる英也さんは次に詫びを口にしてきた。
なんの詫びかは言わずも分かっていたから、俺は首を横に振った。婚約式がある二日前に、俺はこの人と会って話している。
招待状と一緒に添えられていた手紙に会いたいって言われたから。
ご丁寧に電話番号まで同封してくれたんだ。
会うしかないと思った。
「君にはとても、酷なことをしていると自覚がある。だが」
「いいえ。そちらにも事情があると思いますので。俺は最後まで婚約式を見届けたいと思います。それが今、俺に出来る精一杯だと思っていますから」



