挨拶を返してくれる二人は、この度は申し訳なく思っておりますと小声で謝罪された。
それは俺と鈴理先輩に対する詫びだった。
「いいえ」
俺はそれ以上も以下もない言葉を掛けて首を横に振る。
こうなってしまったのは誰のせいでもない。
誰が悪いというわけでもない。
ただ俺と鈴理先輩の関係が二財閥にとって想定外だった。それだけのことだ。
鈴理先輩と俺の噂も立っているみたいだけど、俺が先輩の恋人だってことは財閥界にばれていない。
だからこそ堂々と婚約式に出席できた。
「玲さんも、百合子さんも妹のためにお越し頂き、まことにありがとうございます。お近づきのしるしにお二人のデータを取らせて頂きたいのですが」
さらっと咲子さんが問題発言を投下する。
何処からともなくメモ帳を取り出し、データを取ろうとする構えはアダルトな雰囲気とアンバランスだ。
ああ、そういえば忘れていた。
咲子さんは女の子スキーだってことを。
瑠璃ちゃんが男の子スキーなら、咲子さんは女の子スキーでデータをよく取りたがるそうな。
「お姉さま」
そんなことをしている場合じゃないでしょう、そうお叱りを飛ばす真衣さんも変わった趣向の持ち主だ。
鈴理先輩が攻め女受け男の持論を唱えるなら、彼女はその逆、まさしくケータイ小説王道のような攻め男受け女の持論を掲げている。
世間体からしてみれば王道な思考かもしれないけど、彼女の場合、妄想癖が激しい。
揃いも揃って変わった四姉妹だと思う。
挨拶しに来てくれた姉妹さん方に微苦笑していると、宇津木先輩が鈴理先輩の様子を尋ねた。
途端に浮かない顔を作る姉妹はまだ挨拶回りに言っていると視線を流す。
表向きは能面だが、内面は穏やかじゃないと端的に教えてくれた。
親が勝手に決めた婚約式のことを快く思っていないらしい。
べつに大雅先輩が嫌いってわけじゃないだろう。
でもあの二人はその気が無かった。
だからこそとんとん拍子で決まった式に憤りを感じているらしい。



