むしゃむしゃと食事を食べ進めていると、「今日はバイトだったのかい?」御堂先輩が話題を振ってきた。
「もちっすよ」
少しでも稼がないと我が家はやってられないのだと俺は吐息をつく。
やっぱり給料10%カットは我が家にとって痛手の他になんでもない。不況の波って怖いな。
「まあ、空さん。バイトを始めたんですの?」
「ええ。ちょっと生活が苦しくて。勉強に差し支えない程度にしろって親には釘刺されているんっすけど」
いづ屋で働いていることを告げれば、今度遊びに行くと宇津木先輩が綻んできた。
あざーっす。
俺達店員のために稼ぎの糧になって下さい。
あそこは昇給もあるみたいだから、俄然俺はやる気なんだよ。
十円でもアップしたら俺の家は助かる!
「僕も遊びに行くからな」
土日はいつも通ってやると、御堂先輩が俺の肩に腕を乗せてきた。
いやそこまではちょっと…、苦笑する俺の皿からローストビーフを掻っ攫って御堂先輩は口に放る。
ああぁあ! 俺のローストビーフっ、ご自分で取ってきて下さいよ! テーブルには沢山あるんっすから!
ぶう垂れる俺に一笑し、代わりにこれをやると御堂先輩が俺の皿にミニトマトを置いてきた。
いやいやいや格が違うっすよ!
お肉を恵んでくださいって!
がびーんとショックを受ける俺に、章背を漏らす御堂先輩はからかい甲斐があると髪をぐしゃぐしゃに乱してきた。
その光景に宇津木先輩も笑ってくる。
酷いやい、二人して俺を笑い者して。
ますますぶう垂れる俺の耳に、周囲の声が聞こえて来る。
どうやら御堂先輩の噂のようだ。
男嫌いの御堂財閥長女が男と戯れていることが摩訶不思議ミステリーらしい。
「あ。しかも」
あいつは財閥界で噂になった御堂財閥長女が襲った奴じゃ、と何処からともなく御堂先輩と俺の噂を知っている輩が声を上げていた。
そういえばそういう噂もあったな。
ははは、あれは俺のせいじゃない。
御堂先輩のせいっすよ。
この人が俺を女とか変なことを言って騒ぎ出すから。
御堂先輩の耳にも声が届いたのか、「噂か」今じゃ素敵な噂だと思えるな、と俺に一笑してくる。
そりゃご自分だけでしょーよ。
俺は仕置きされたりヤーンされたり散々だったって。



