前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



とはいえスピーチはあまり耳に入ってこなかった。

俺の目はドレスアップされている鈴理先輩に釘付けだから。


いつ見ても先輩は美人だと思う。

今日は一際、美人の『美』の要素が際立っていた。

自然な『美』を引き出すメイクをされているからだろうか?

あの人にいつも攻められていると思うとなんだか不思議な気分。


見た目はお淑やかな女性に見えるんだもん。


中身はてんでお淑やかじゃないんだけどな。

だってあーんなことやこーんなことをしてきたり、ヤーんなことで俺を困らせてくるんだから。


そんな彼女と大雅先輩が並べば、そりゃあ周囲が羨ましいと思う美男美女カップルだろう。


挨拶中、俺は鈴理先輩と視線がかち合ってしまう。

能面だけど含みある視線は俺に何かを訴えかけていた。

俺は笑みを返す。今の俺に出来る、精一杯のことだと思った。
 

最初に二階堂家が、後に竹之内家の大黒柱が挨拶をする。

最中にボーイさんから飲み物を配られた。

乾杯をするための飲み物だろう。

身なりで学生って分かったのか、選択しなく葡萄ジュースを手渡される。


大人は赤ワインみたいだ。親の長ったらしい挨拶が終わると乾杯の音頭が取られ、客人の俺達は口を揃えて乾杯。立食が始まった。


俺は早速食事を始めたんだけど、周囲は向こうの家族たちに挨拶しに行っている。

勿論俺みたいに食事をする奴もいるけど、大人はご挨拶モードらしい。


まあ、親睦を深める内輪婚約式だ。

挨拶は当然するべきなんだろうな。
庶民出身の俺には分からないけど。


それに俺が今、婚約者達のところに行ってもな。


雰囲気ぶち壊すだけだぞ。
先輩達を気遣わせてしまう。


ただでさえ御堂先輩や宇津木先輩から心配されているんだ。これ以上、誰かに心配を掛けたくない。
 

小皿に名も知らない料理を取り分けて一口。


嗚呼、美味い。

これが何の料理で、どういう味をしているのか説明できないけど、ジャガイモ美味いよ。ホクホクしている。

パイ生地に包んであるみたいだけど、ジャガイモパイじゃなさそうだ。

なんだろう、この料理。


滅多に食べられないローストビーフもここぞとばかりに噛み締めた。

パーティーで楽しめるといったら俺の場合、食事くらいだ。

周囲は談笑しているけど、御堂先輩達以外に知り合いはいないし。