「空さん。大丈夫ですか?」
露骨に心配されてしまう。
それはそれで居心地が悪くなるけど、俺は大丈夫だ。
首肯して綻んだ。
今日は純粋に二人の婚約を祝いに来たのだと伝える。
そしたらすっげぇ宇津木先輩に心配された。
安心させるつもりが余計不安にさせたみたいだ。本当に大丈夫、なのになぁ。
「豊福」
御堂先輩にまで心配されてしまう。
再三大丈夫だと柔和に綻んだ俺は、今日は祝う気持ちで来たのだとさっきと同じ台詞を伝える。
そりゃあ二人が婚約するって情報を聞いた時はびっくりしたけど、でも、いつかは来ると思っていたことだ。
彼氏の俺から言えるのはおめでとうの五文字なんだと思う。
尤も、優しい鈴理先輩や大雅先輩が素直に受け止めてくれるとは思えないけどさ。
それから同じ優しい類の宇津木先輩や御堂先輩には感謝しないとな。
こんな俺を真摯に心配してくれているんだから。
「俺のことより今は二人ですって」
婚約する二人をお祝いしましょう、言葉を掛けると二人から曖昧に笑われてしまった。
ありゃ、俺が言うと皮肉に聞こえたり?
そりゃごめんなさい。皮肉をぶつける気は毛頭も無かったんっすよ。まじで。
七時、開式時間になる。
会場が暗くなり、照明は前方の壇上に向けられた。
そこには二階堂家と竹之内家の二家族が揃っている。
ご両親や主役は勿論、大雅先輩のお兄さんや鈴理先輩の姉妹さん方がいた。
俺はふと宇津木先輩に視線を流し、ご自分はあそこにいなくて良いのかと尋ねた。
一応宇津木先輩は楓さんの許婚。
立場的に言えば大雅先輩の未来の義姉だから、あそこにいてもおかしくはないと思うんだけど。
「これは公式ではありませんから」
もし公式ならば、自分もあそこにいなければいけないと彼女が教えてくれた。
なるほど、俺は相槌を打つ。
二家族の挨拶が始まった。
こういう挨拶は大抵眠くなるんだけど、今回はなんとなく頭が冴えているのか、眠気は襲ってこなかった。



