百合子は苦笑いを零しながら、取り敢えず社交辞令として今日の婚約に対する祝いの言葉を羅列した。
双方素直に受け取らないのは彼等にとって望まない婚約式だからだろう。
最悪だと唸っている鈴理が大雅の脇腹を小突く。
「俺に当たるなって」
吐息をつく大雅は二人に建前の挨拶を返した。
今日は来てれてありがとう、パーティーを楽しんでくれ、と。
「ま、大したパーティーじゃないとは思うけど。飯は美味いと思うし」
早く帰って寝たい、始まる前からホームシックになっている大雅に二人は苦笑する。
気持ちは分からないでもない。
「時間は大丈夫ですの?」
主役二人はそろそろ会場に入っておかなければいけないんじゃないか、百合子が腕時計で時間を確認しながら気遣った。
「それもそうだな」
大雅は鈴理を呼んで中に入ろうと声を掛けた。
むっすり不機嫌になっている鈴理から応答はない。
完全にヘソを曲げているようだ。
「これなんだよ」
社交辞令以外はずーっとこれなのだと大雅が嘆いた。
おかげで自分が気苦労している、大袈裟に肩を竦める彼に百合子はまたひとつ苦笑した。彼も大変そうである。
「駄目っすよ。鈴理先輩、大雅先輩にあたし様を発揮しちゃ。困ってるじゃないっすか」
その場にいた四人の空気がとまった。
やや苦い笑声を含んだ台詞は今何処から…、ぎこちなく視線を階段のある向こう廊下に流す。
そこには主役達にとって招かざる客人が立っていた。
百合子と同じ学校であると主張している制服を身に纏っているその人物。
手には小さな花束がおさまっている。
ある程度、反応を予想していたのか、
「弱ったなぁ。アウェイな空気は苦手なんっすけど」
彼は頬を掻いて微苦笑。
「空。なんで此処に」
明らかに動揺しているのは鈴理である。
目前の彼氏に尋ねると、「なんでって言われましても」お呼ばれしたからとしか言いようが、軽い口調で返して四人に歩んだ。
主役の片割れであり彼女でもある鈴理に花束を手渡し、彼は呼ばれた証拠としてポケットから招待状を取り出した。



