前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



彼女の問い掛けに、たっぷりと俺は間を置いて「ダイエット中っす」と笑顔を返した。
 

だから遠慮せず食べて欲しい、言った直後に腹の虫が鳴って俺は居た堪れなくなった。


ちょっとは空気を読んでくれよな、俺の腹。向かい側で先輩方が、まさかと顔を引き攣らせてるじゃないか。

突き刺さる視線に観念した俺は、「お弁当にできるものがなくて」とおずおず家庭事情を暴露。
 

「その、さっきも言ったんっすけど…、今月、ちょっと俺の家、一杯一杯でして。お恥ずかしい話、昨日まで電気とガスが止められてたんっす」
 
「ま、マジかよ…」

「マジっす。三日くらい電気とガスが止められて、ちょっと生活し難いってことで光熱費を払ったはいいんっすけど、今度は食費の方が」


まあ、慌てるほど大袈裟な話でもなく、もうすぐ父さん、母さんの給料日だから、それまで生活を持たせればいい話なんっす。

お弁当が作れないからって母さんがお金は一応持たせてくれたんっすけど、これを使っちゃったら、俺の家、一週間もやし炒め決定なんっす。

何度か経験したことあるんっすけど、一週間もやし炒めは辛いっす。


なんというかシャキシャキ感に飽きてくるんっすよ。

煮ても炒めても湯がいてもシャキシャキシャキ…、調理法や味付けを変えてもやっぱりもやしはもやしなんっす。

 
もやし一週間漬けは断固死守したいんで、今日は昼食を抜いてタイムセールに賭けようと思いました。

全財産の千円を今日のタイムセールに捧げる勢いっすよ、俺!
 

「俺はまだ学校に通っているだけなんでいいっすけど、父さん、母さんは働いている身の上。疲れた体にもやし炒め一週間漬けとか苦痛極まりないっす!

ぜぇえったい栄養価の高いものをゲットして、二人に食べさせないと。
二人もそう若くはないんで、美味しい物を食べて疲労回復に努めて欲しいんっすよ。

今日は双方、飲み会に誘われているみたいだから安心なんっすけど」

 
「まったく。ご両親至上主義もいいが、少しは自愛したらどうだ?
そうやって苦労を同情されたくないのは分かるが、少しはあたしに頼れ。言ってくれたら、弁当だって作ったというのに。

ばあや、すまないがこれを分けてくれ」