「大雅と鈴理ちゃんはよく喧嘩しているもんね。でも僕には気が合い過ぎているように見えるんだけど」
「うーっせぇ」
「……、どうして大雅まで財閥に縛るんだろうね。うちの親は。長男が頑張るって言うんだから、次男はもう少し好きにさせてやってもいいのに」
そりゃ兄貴が頼りないからだっつーの。
心中で毒づく大雅に気付かず、「もっと自由にしていいから」楓は頬を崩した。
「大雅は変なところで真面目だから」
親や僕に気を遣うんだよねぇ、含みある台詞を零す。
それは自分の心境をすべて見透かしたような台詞である。
大雅は口を閉ざした。反論する気も誤魔化す気にもなれないのだ。
きっと兄は気付いている、秘められた自分の想いに。
ばりばりと煎餅を頬張る楓は再三再四同じ台詞を大雅にぶつけると小声で謝罪した。
べつに兄は詫びられるようなことなどしていないではないか。
その意味を込めて睨みを飛ばすと、楓がごめんと片手を出して苦笑い。
「お煎餅のかす。ボロボロ落としてほんっとごめん」
大雅は視線を落とした。
そこには自分以上に汚い食べ方をしている兄の手元が見えた。
わざわざ袋から煎餅を取り出して、ばりぼりしていたら、そりゃあ煎餅のかすがベッドに落ちても仕方がないだろう。
「バッカニキ!」
此処は俺のベッドだっ、何してくれるんだよ!
頓狂な声を上げる大雅に、ごめーんと楓がへらへら笑った。
ピキッとこめかみに青筋を立てた大雅がこの直後、兄に拳の鉄槌を落としたのは語るまでもないだろう。



