「まあ」取り敢えずは日曜を乗り切ることだな。
大雅はそれから先の問題を話し合おう、と相手に提案する。
肯定の返事をする鈴理は大雅に礼を告げてきた。
わざわざ心配して電話して来てくれたことに対し、純粋に感謝を述べてきたのだ。
「気色悪っ。お前らしくねぇな」
笑い飛ばす大雅は、もう寝ろと苦笑した。
色んなことがあって疲れているのだ。少し休んだ方がいい。
相手に促し、大雅はおやすみと言葉を掛けて電話を切った。
スマホをベッドに放ってぽりぽりと頭部を掻き、今の現実に溜息を零す。
自分の人生ってなんだろう。
財閥界の波に翻弄されるだけの人生なのだろうか。
老けた思考に浸っていると、自室の扉がノックされた。
返事すると、「たーいが」能天気な兄の声が鼓膜を打った。
二階堂楓が部屋を訪れたのである。
楓は大雅に歩むと手に持っていた長方形の箱を開き、「お煎餅食べない?」老舗からの差し入れだって、と綻んだ。
脱力してしまう。
今はそんな気分ではないのだが。
「兄貴。俺が今、どーんだけ大変か知ってるのか?」
「だからこそ差し入れしに来たんじゃない。ほら、醤油あげるよ。美味しいって」
突っかかっても電波な兄には無効化だろう。
素っ気無く個包装された煎餅を奪い取り、ベッドの縁に移動する。
こぼれかすが落ちるなど、大雅の知ったこっちゃなかった。
第一自分がこぼすわけない。
妙な確信があった。
うんうんそれでいいのだと楓は綻び、眼鏡のブリッチを押すと大雅の隣に腰掛けた。
「鈴理ちゃんと婚約するのそんなに嫌かい?」
不意打ちのフックを頂戴した気分である。
藪から棒になんだと鼻を鳴らした大雅だが、「あいつと俺じゃ」気が合わないんだよ。なにより結婚したいとも思わない。
冷然と返すと、楓は微苦笑を零した。