両親とはかなり話し合った方だ。

結婚せずとも二階堂家と竹之内家のパイプラインは強化してみせる。

結婚という媒体で繋がりを強化せずとも、将来必ず業績上げてみせる。


何度も何度も取り合ってくれるよう頼み倒したのだが、結果は惨敗の二文字に尽きる。


家族を思うなら婚約しろの一点張りなのだ。

自分達の主張は我が儘の一言だとあしらわれてしまった。

なあにが我が儘だ。此方は生まれながら勝手に家のことを背負わされたというのに。
 

「日曜の婚約式は逃げられねぇ。
ただしまだ内輪のみの仮婚約式だ。つまり俺達の関係は非公式の婚約者になる。すっぽかしたら後が怖いしな。一旦、婚約者になるしか道はねぇ」

『ああ』


「……、豊福にこれ以上黙秘はできねぇかもな」

『…ああ。だが婚約式が終わるまでは黙秘しておきたい』


空には知られたくないんだ、婚約式のことを。

鈴理の切な訴えに大雅は理解を示す。


彼女自身も恋人に説明する言葉が見つからないのだろう。


取り急ぐかのようにあれよあれよと決まったことだ。

自分を含め、気の強い鈴理が動揺するのも仕方のないことである。
 

ただ…、何処まで黙秘が通用するだろうか。


大雅は後輩の探りある眼に気付いていた。

すっ呆けているように見えるが、空は薄々勘付いている。


自分達が重大なことを隠していることに。


時折見せる鋭い眼光が此方の有無を言わせないのだ。


こうして自分が気付くのだから、当然彼氏を常に見ている鈴理も気付いている。

騙しているつもりなど毛先もないが黙秘をし続けることは非常に辛い。

鈴理と行動を共にしている早苗や百合子には既に事情を話しているようだが、それにしても、である。
 

「隕石でも落ちてこねぇかな。そしたら婚約式とかパァだろ」


非現実的な台詞を吐く大雅に、しごく真面目に鈴理は同調した。

双方、現状にストレスが溜まっているのだろう。

こうした冗談でも言わないとやってられない気分なのである。