手紙を読み終えた俺は机上にそれを置くと、鈴理先輩から借りている携帯を取り出し、彼女にメールをした。


しごく他愛も無いメール内容で、俺は彼女に今週の日曜日は空いているか? と尋ねた。

すぐにメールが返ってくる。

答えはノーだった。

どうやら用事があるらしい。


謝罪文が綴られているメールに、俺は苦笑して返信した。『気にしていませんよ』と。


携帯を閉じると俺はカレンダーの前に立って、


「確か土曜日が給料日だったな。手渡しだから振込みとか関係なんだよな」


初給料日だと綻んだ。
三万はもらえる筈だから、二万は家に入れて、一万は俺の手元に置かせてもらおう。
 

「だから先輩達…、ほんっと優しい人達なんっすね」
 

いつまでもカレンダーを見つめた俺は、自分の感情を押し殺して必死に笑顔を作った。

嗚呼、いつかは来るかもしれない。

そう懸念していた現実がこうもまざまざと俺を蔑視している。


行き場のない感情を散らすために、俺は心に決める。


せめて先輩達の前では笑顔を作る努力をしよう、と。


机上に置いている手紙に俺は視線を流す。

あれはただの手紙じゃなかった。
俺は今週の日曜、あれを持ってお祝いに行かないといけない。