前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



なにより攻める時の表情が活き活きしているから、俺は唇を食んでくる先輩を受け止める他術を知らなかった。

鈴理先輩は本当に何かに限界を感じているのか、交わしてくるキスが激しかった。

痛みを感じるキスは余裕の許容範囲がオーバーしていることを教えてくれる。


呼吸を奪うような口付けが激情に駆られていることを物語っていた。


柔らかな芝生に沈む間も先輩は解放という二文字を見せてくれない。

口内で交わる互いの体温がひとつに融解する。

恐ろしいほど、それが快感だと思うもんだから暫くキスをご無沙汰していたんだなぁって実感した。


……いやいやいや!
でも俺はあっち方向でやーんするつもりはないよ!


健全な男の子だどもキスどまりで頑張るよ!

持論は覆さない、俺はスチューデントセックスを拒絶するのです!
 

というか先輩、いつまでキスを…っ、俺、死にそう。

ケダモノみたいなキスをされ続けてもっ…、ッハ、まさか俺を鳴かせようという魂胆じゃ!


それだけは頂けないっ、頂けないっすからね!

やっと鈴理先輩が解放してくれる。

ゼェゼェと肩で息をする俺に綻んで、先輩は首筋に痕を付け始めた。好きにさせておくことにする。

今の俺にはそれを止めるだけの余力が無いから。
 

「また暫くは」消えないっすね、俺は苦笑いを零して肉食お嬢様の髪に触れる。

「当たり前だ」いつまでも消えないさ、誰の所有物だと思っている。


高飛車に物申してくる鈴理先輩だけど、なんか空気が変。

いつものあたし様らしくない。


伊達に受け男をしているわけじゃないんだ。

すぐに分かるよ、先輩の空気の変化くらい。
 

でも空気が俺に訴えているんだ。何も聞かないでくれって。

だから俺は聞かないことにした。俺ってやっぱりヘタレなんだろうな。


絹糸のような長い髪を指先で弄くり、俺は上体を起こした。


「充電は大丈夫っすか?」相手に尋ねると、「まだ足りない」それこそ空を食らってやりたいほどに、妖艶に笑って鈴理先輩が俺の顎を指で掬ってきた。


俺はまたひとつ微苦笑を漏らす。


今は黙って攻められよう。

そう先輩が望んでいるんだ。
何も言わず、何も気付かず、何も知らず、彼女の傍にいよう。 


それが最善の策なのだと俺は信じて疑わなかった。

それが彼女のためなんだって信じて疑わなかった。