とにもかくにも俺は短時間の間で地獄を見たとしか言いようがない。

やっばい、御堂先輩は鈴理先輩より鬼畜かも。

てか、攻め方がえぐい。

キスとかはされていないけど、まさかあんなことやこーんなことをした上にやーんな言葉攻めと拘束まがいなこともっ、ぎゃぁあああ! あの人の攻めを口で語るのも怖いっ…、精神的にくるってまじで!


取り敢えず思ったことは御堂先輩を過度に拒絶すると痛い目を見るってことだ。


ちなみにちなみにブレザーは自分で脱ぎました。はい。

脱がさせて頂きました。…はい。

 
戦場からどうにか帰還した負傷兵士のようによろめいている俺に対し、清々しい表情を浮かべる御堂先輩は「今日はゆっくり休むんだぞ」明日もバイト頑張れ、と声援を送って俺のぼざぼざな頭を撫でてきた。

髪がぼさぼさなのは勿論目前の人のせいだ。


「ば。バイト頑張るっす」


へらっと笑う俺に、素直で宜しいと御堂先輩がきらっと笑顔を輝かせる。


「素直な子は好きだぞ。意地っ張りな子も好きだけどな。まあ、意地を張るならそれだけ素直にさせればいいだけ。な?」


垂れ下がっているもみ上げを耳に掛けるプリンセス。

ボソッと呟いた台詞に俺はピシッと硬直した。

脳裏に蘇るのはさっきの悪夢の数。

み、御堂先輩怖いっ…、鈴理先輩より怖いっ!


前に鈴理先輩が腹黒いって言っていたけど、なんとなく意味が分かったぞ。俺!
 
 
改めて俺は送ってもらったお礼を告げ、御堂先輩を乗せた車が見えなくなるまでお見送り。

ひらひらと手を振って佇んでいた。

そして見えなくなると、がっくし脱力。


「つ。疲れた」


下手すればバイトよりも疲れたかもっ…、歩いて帰った方がマシだったかもしれない。


「肉体的な攻めが強いのは鈴理先輩。精神的に攻めが強いのは御堂先輩。
はぁああ、身が持たないって。鈴理先輩は押し倒しが中心だけど、御堂先輩は言葉が中心っ。どーしよう、貞操が守れる気がしなくなってきた」