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【昼休みの学食堂にて】

  

「うっわぁ、どうしよう。慎重に決めないと、こういうのってすぐになくなっちゃうんだよな」


 
二兎を追う者は一兎をも得ずってヤツだ。

まずは優先順位を決めて、確実に手にしたい物をピックアップしないと。


あれもこれも迷っていたら、何も手にできない。
折角の機会なんだから、なるべく多くの物を手にしたいけれど。
 

俺はボールペンを片手にジーッと紙切れと睨めっこ。
 

眉根を寄せて視線を配っていると、「空」何しているのだと向かい側から声を掛けられた。

顔を上げれば注文した定食を片手に席に着く鈴理先輩の姿。

「チラシか?」まどろっこしいもの読んでるな、彼女の隣に座る大雅先輩が揶揄してくる。


ちょ、まどろっこしいってなんっすか、チラシは生活の情報が一杯詰まってるっていうのに!


そりゃあ御曹司お嬢様方には関係のない代物でしょうけど。
 

……てか、ほんっと大雅先輩、毎日のように俺達とメシ取るようになったな。

当たり前のように俺達の席に着いちゃって。
 

鈴理先輩も諦めたのか、肩を竦めて椅子に腰を下ろしていた。

何度言ってもこっちに来るもんな。

ぜぇーったい友達少ないんだろうな、大雅先輩。性格に難があるし。

別に嫌ってわけじゃないけどさ。

大雅先輩が来ると、自然と宇津木先輩や川島先輩もやって来るんだよな。

後で二人もやって来るんじゃないだろうか?
後輩の俺としては、先輩バッカでなんだか居心地が悪いんだけど…、今度フライト兄弟を誘ってみようかな。


そんなことを片隅で考えながら、俺はチラシを四つ折にした。
 

改めて何をしていたんだと質問してくる彼女に、

「タイムセール告知を見ていたんっす」

俺はスーパーのチラシをピラピラと翳す。