前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



と思ったんだけど、御堂先輩はコンビニ前で待ち合わせをしていたみたい。

コンビニの小さな駐車場に停まっている一際目立つ高級車を見つけると、それに歩み寄ってコンコンっと窓をノック。

扉が開くと御堂先輩が俺を車内に押し込んだ。


「アイテッ」


ぽいっと放られたせいで座席に背中を打ちつけてしまう。

一体なんっすか、本気で俺をお持ち帰りするつも…っ、マジでされるんじゃないか?

だって車に乗せられたって、つまりそういうことなんじゃ。


サーッと青褪めていると、「お帰りなさいませ」凛と通った声音が鼓膜を振動した。
 

視線を前方に流せば、向こうの座席に着物を着た女性が腰掛けている。

髪は一つに結ってお団子にしている。

それから薄紫に花が描かれている柄の着物を着ているんだけど、その花が何かは分からなかった。


ただ鮮やかで綺麗な白い花だってことは分かるんだけど。

彼女は見るからに大人な女性って感じで、目分三十代だと俺はみた。


御堂先輩に挨拶をした後、俺に挨拶をしてくる彼女に俺は慌てて姿勢を正すと挨拶を返した。

にこっと綻んでくる女性の名前は蘭子さんというらしい。

御堂先輩のお目付けだとか。


鈴理先輩でいうお松さん的ポジションかな。

彼女も御堂先輩の教育係をしているらしい。


はじめましてと柔和に綻んでくる蘭子さんは直後、着物の袖で目元を押さえ始めた。


え、急にどうしたの?

なんで泣き始めて…っ、戸惑っている俺を余所に、「お嬢様が」男の方を車内に連れてくるなんて、と蘭子さんは感動に浸っていた。


「今まで、玲お嬢様が連れてくる方はすべて女性でした。嗚呼、もしやこの方が玲お嬢様の彼女になられるのではないかといつも心配してっ。
男の方が乗って下さるなんて夢のようです。口を開けば、女の子の方が可愛い。可憐、魅力的な生き物だとばかり言って」


………、なんかフツーに想像がつくな。それ。
 
空笑いをして蘭子さんの様子を見守っていると、御堂先輩が呆れたように彼女の名を呼んだ。

息を吹き返した蘭子さんは、お恥ずかしいところを見せてしまいましたと袖で目元を押さえなおし、此方が見惚れてしまうような笑みを浮かべる。

蘭子さんの微笑は本当に大人って感じ。男心をくすぐる微笑みを持っている。


つい、ぽわっと見惚れてしまった。大人の魅力ってヤツかな?


そのせいか、御堂先輩から満面の笑顔で「余所見なんていけない子」と横から顎を掬われる。