前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



知らず知らず片手に持っているモノを握り締めてしまった。

それが強引に連れ出してしまった御堂先輩の腕だと気付くのに、少しばかり時間が掛かってしまう。


「あ。すみません」


やっと人の腕に握力を掛けていた現状に気付き、俺は相手に謝罪して腕を離す。
 
同じ光景を見ていただろうに、御堂先輩は表情を変えず、「いや気にしていないさ」と綻んできてくれた。

そのせいか俺の方が変に微笑を作ってしまい、上手く笑えず決まり悪い気持ちを抱いてしまう。

こっちの心情を見透かそうとする強い眼に堪えかねた俺は、「えーっと」視線を逸らして聞かれてもいないのに弁解を始めた。


「べつに鈴理先輩達と喧嘩しているわけじゃないんですよ。
ただなんとなく今はお取り込み中だったから、俺がいると邪魔になるというか。二人とも今、家のことで忙しいらしくて。令息令嬢って大変みたいっすねぇ。

いやぁ、庶民の俺には分からないっす」
 

どっかの雑誌で見たけど、人間って後ろめたい気持ちがあればあるほどお喋りになるらしい。

まさしく俺もそれで喋りだしたらやめられないとまらない、とにかく誤魔化したい気持ちで胸がいっぱいになった。

けれどプリンセスは俺の稚拙な誤魔化しには乗ってくれない。

「豊福」少しは気持ちに素直になってもいいんじゃないか、と微苦笑を零して俺の誤魔化しを取っ払ってきた。

必死に虚勢を張ろうとしていたもんだから、その言葉には困ってしまう。


俺は素直になんてなりたくなかった。なったら、カッコ悪い自分を曝け出すって分かっていたから。


ぽりぽりと頬を掻いて視線を泳がせていた俺だったけど、やっぱり自分に嘘をついて笑顔を作った。
 


「気を遣わせてすみません。でも大丈夫っす。お二人のことは心配ですけど、俺は全然っすよ。
うーん、なんか湿気た空気にしてしまいましたね。此処が日陰だからでしょうか? 場所を変えましょう」


 
何処に行きましょうか、考える素振りを見せて足を踏み出す。

刹那、視界が反転した。

目を点にしている俺を余所に、


「さてとテイクアウトした後はどうするかな」


とかなんとか言って御堂先輩が歩き出す。

彼女に担がれているのだと把握するのに数秒時間が掛かっ…、ちょ、なんで俺、担がれてるんっすか!


「センッパイ!」


下ろしてくださいよっ、身を捩って懇願する俺に、「駄目だ」僕は今から君をテイクアウトするのだと御堂先輩。

テイクアウトって、もしかして俺を御自宅まで連れて帰るつもりっすか?!