「俺もバイトのこと、自分で決めてやろうと思ったっす。
両親はやらなくても大丈夫だって言いました。無理しなくてもいいって言ってくれました。でも俺がやりたかったから。
……うーん、言いたいことが滅裂になっちゃいましたね。
とにかく御堂先輩の思うとおり、やってみていいと思うっす。見合いが嫌なら、それこそごめんなさいしてドタキャンしてもいいと思うっす」
御堂先輩ならそれくらい朝飯前に出来そうだと小生意気なことを言って笑ってやる。
面食らった彼女は、すぐに表情を戻して頬を崩した。
「君は初対面からそうだったな」
人のことを蔑んでいた僕を怒り、男女平等に敬ってくれる。
そういうところが一目惚れする契機だったのかもしれない、柔和に綻ぶ御堂先輩は骨張った指を伸ばして俺の両頬を包んできた。
ストローから口を離してギョッと驚く俺に一笑して、身を詰めてくるプリンセス。
体を引いて逃げる体勢になるんだけど、すぐそれも手詰まりになった。
お、おかしいな。
なんでこんなにも空気が桃色なんでっしゃろう。
く、空気を散らさないと何やらヤな予感が。
「ええっと」目を泳がせて逃げる口実を探す俺は、手元にあったシェイクを先輩に向けて一口如何でしょうかと愛想笑い。
にこっと目で笑みを返してくるプリンセスは、
「豊福を一口頂きたいな」
と素早く顔を近づけてきた。
柔らかな感触に瞠目してしまう。
目を見開いて俺の抹茶シェイクを掻っ攫う御堂先輩は、「今は間接キスで我慢するさ」とストローに口をつけた。
咄嗟のことだったから身構えることも忘れちゃったけど…、でも絶対キスされると思ったよ。
いやキスはされたけど額にされるなんて…、過去にもされたけど、今回はなんかどぎまぎ。
ううっ、何なんだろう、この妙な気持ちは。
最近鈴理先輩に相手にされていないこともあってか、誰かにキスされるなんて久しいや。
……って、能天気にンなこと思っている場合じゃない!
これが彼女にばれたら鈴理先輩に怒られるじゃないっすかっ!
ぎゃぁああっ、仕置きを思い出しちゃうんだけどっ、だけど!
な、鳴かされるぅうう!



