わりと平常心を保ったまま御堂先輩は苦笑を零して、
「見合いをすることになったんだ」
それで機嫌が悪いんだと糸も簡単に理由を教えてくれる。
見合い。
目を丸くする俺に「安心しろ」好きなのは君だから、と御堂先輩が一笑してくるけど、そういう問題じゃない。
高校生なのに見合いをするってのに俺は驚いている。
まあ、先輩は令嬢だしな。財閥同士で許婚を取り結ぶってのもあるくらいだし、今更驚く必要もないんだろうけど。
相手はどんな人なのかと当たり障りないことを聞いてみる。
「知らん」
一切不明なのだと御堂先輩。
彼女が興味を持っていないからじゃなく両親さえ分からないのだと教えてくれた。
「見合いを決めたのは僕の両親じゃない。僕の祖父なんだ。ちなみに父方な」
「おじいさんっすか」
「ああ。あのクソジジイが勝手にな」
どうやら御堂先輩にとって、自分のおじいさんはあまり好く思っていない人らしい。
表情の険しさが濃くなっている。
これ以上は聞かない方がいいような気がしたんだけど、御堂先輩の方から語り部として立つ。
「僕の男嫌いの根源は」祖父が原因なんだ、と。
「祖父にとって僕は、望まれて生まれた孫じゃなかった」
対向車線向こうでバイクの過ぎ去る喧(かまびす)しいエンジン音が聞こえたのに、それさえ無効化にしてしまう静かな空気が俺達の間に下りていた。
すぐ後ろの歩道からチャリの過ぎ去る気配がした。
それを合図に俺は団子の無くなった串を容器に戻し、御堂先輩の食べ終わった串も同じ場所に戻す。
俺が口を閉ざしているのは困っているからじゃなく、御堂先輩の話に耳を傾けるため。
彼女も察しているのだろう。少しの間、口を閉ざした後、語り部に戻った。
「御堂家は代々女系なんだ。あまり男に恵まれない一族で、生まれるのは女ばかり。
だから祖父が男として生まれた日は、大層喜ばれたそうだ。
それは祖父の実子である父も同じ。二世に渡って息子が生まれるなんて御堂家では殆ど無かったんだ。
周囲は期待した。二世代息子なら、三世代息子になる可能性もあるんじゃないかと」



