昔から鈴理とは争っていた。

身長や学力、胸の大きさその他諸々。
 

なにより男ポジションに立ちたい気持ちはお互いに強く、男嫌い故に自分が“男”になって、男女共々リードしてやると野望を抱く自分。

男ポジションにしか憧れを抱けなかった鈴理。


お互いに男ポジションを目指して突っ走っていた。


一人称を“僕”にし男装を好む自分と違い、それこそ男そのものになろうとはしなかった鈴理だが“攻め女”という持論を掲げて、自分の望む男ポジションを手にしようとしていた。

選ぶ道は若干異なるものの、望むものはいつも同じだった。

 
『女は男を食ってこそ、価値があると思わないか? この世の中は男が女を食う物語ばかり。つまらん! あたしは攻め女を貫いてやる』

『鈴理。女は男に勝ってこそ存在意義があると思う。男なんて不要だと思わないか?』


『それこそつまらないぞ。あたしは男を押し倒したり、鳴かしたり、喘がせたりしたいのだ。男がいなければ攻め女になれないではないか。
玲こそ男嫌いなのに男装をしているではないか、アンタの持論に反していないか?』


『反していない。僕は世の中の男が嫌いなんだ。負けるのも嫌いだ。男女平等とはいえ、何処かしら男尊女卑が存在する。
だったら、僕自身が男になって男に勝ってやるのさ。男ポジションを奪ってやる』


『それは面白い思想だ。男ポジションを奪ってやる、か。そこは同調してやろう』

『君に同調されても嬉しくともなんともない』



あの鈴理が男に夢中。

嗚呼、どんな男だろう。



「今日のパーティーに連れて来たらいいんだが…、鈴理の彼氏、か」
 
 

調べ甲斐がありそうだ、玲は口端をぺろっと舐めて悪戯っぽい顔を作った。


その表情に蘭子は小さく溜息。


これはもう暫く、男にも恋愛にも興味を持ちそうにない。


玲の子供を抱けるのはいつだろう、密かに涙した蘭子だった。