前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



本日のあがりは5時。

11時から休憩ありの6時間勤務だった。

店の制服から学校の制服に着替えた俺は、ロッカーに前者の制服を仕舞って先輩達にお疲れ様でしたと挨拶した。

店主の伊草さんや先輩達にお疲れ様と笑顔を向けられ、俺も笑顔を返す。

そのまま店の裏口から出ようとしたんだけど、「待って」鈴木さんに呼び止められた。
 

「今日はありがとう。これ、僕からの奢りだよ」


抹茶シェイクの入ったカップと、ビニール袋を差し出され、俺は目を輝かせる。

前者は約束の品物で、後者は鈴木さんお手製の草団子らしい。

「型崩れしちゃってお店に出せなくなったんだ」

失敗作品だけど良ければ食べてやって、彼の言葉に俺はあざーっすと頭を下げてそれらを受け取る。

確かにプラスチック容器に入っている草団子は歪な形をしていて、お店に出せそうにはない。

草団子の上にのっているあんこが変にデコレーションされているっていうか。曲がっているっていうか。

でもこれも立派なお団子だ。


「大事に食べるっす。本当にありがとうございますっす」

「ふふっ。喜んでもらえると僕も嬉しいよ。ここの職場、女が多いから君が入ってくれて助かってるんだ。シフト明日も入ってるよね?」

「はい。土日は基本的に全般入れてもらっていますっす。また明日、お世話になりますっす。特に機械系は。俺、まだレジが不安で。割引とか全然分からなくて」


「大丈夫だよ」すぐ覚えられるし、失敗は誰にでもあることだから。

綻んでくるノッポさんの笑顔に俺は癒された。

この人は癒し系だよな。
瀧さんとは別枠の癒し系だ。


話していてなんか和む。


俺は二度鈴木さんにお礼を言って、裏口から外に出た。


そこからぐるっと回って店内を覗き込んでみるんだけど、あれ、御堂先輩の姿がない。

販売エリアにはご婦人の姿が見受けられる。おはぎを買っているらしい。

飲食エリアは混んでいるけど、二列に並んでいるテーブルに目を配る限り、お一人様の客は見受けられない。

大抵二、三人がひとつのテーブルに着いている。


「帰っちゃったのかな」


御堂先輩も令嬢だし、もしかして急用が入ったのかもしれない。

生憎携帯番号もアドレスも知らないから、連絡も取れないし。もう少し付近を捜してみて、いなかったら帰ろうかな。


「とはいえ、この付近は駅があるからわりとエリアが広いな」


一体御堂先輩は何処にいいいいぃい?! い、い、今、腰を撫でられたような。

ピシッと硬直する俺の胴に腕が巻きついてきた。

ギョッと目を削ぐ間もなく、


「捕まえた」


とアマーイ声が。