前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



勿論、俺は笑顔で貫き通す。通すつもりだった。

けど唖然としてしまう。

だって抹茶Aセットを頼んできた客っ…、なんで貴方様が此処にいるっすか! ほんっと神出鬼没っすね!


「み、御堂先輩じゃないっすか」


学ラン姿の財閥令嬢に俺は硬直してしまう。

向こうも店の制服姿の俺に一変して唖然。


俺を指差して、「何しているんだ」と呆け顔で質問を飛ばしてきた。



な、何しているって勿論、バイト…なんっすけど。



唖然としている御堂先輩に俺は慌てて笑顔を作ると、「抹茶Aセットですね!」すぐにお持ちしますんで! ちゃっちゃかメニュー表を受け取ってとんずらした。


厨房に戻った鈴木さんが「大丈夫だった?」と気遣ってきてくれる。

笑顔で大丈夫だと返して伝票を渡すものの、俺は面倒なことになったと冷汗を流した。


まさか御堂先輩が此処の常連客だったなんて!


そういえば、この前此処の茶屋に行こうって言ったのは御堂先輩だったような。
 

うっわぁああ、なんで鈴木さんを睨むのか理由が分かっちゃったよ! あの人は極端男嫌いなんだよなぁああ!
 

(あぁあああっ、鈴理先輩に教える前に御堂先輩が俺のバイト先を知っちゃったよぉお!
いやあの人達ならストーキングで幾らでも知る機会があっただろうけど、それにしたって御堂先輩が先なんて知っちゃったら、鈴理先輩になんてどやされるか!)


がっくりと項垂れて、俺は恐る恐る店内の様子を覗き込んでみる。

二番テーブルについていた御堂先輩は、腕を組んで思案しているみたいだったけど一体何を考えているやら。

鈴木さんが抹茶Aセットを準備してくれたため(しかも持って行ってとお願いされたため)、俺がそれを御堂先輩の待つテーブルまで運ぶ。


「お待たせしました」


笑顔を向けると、


「お待たせされました」


プリンセスに笑顔を返された。

 
「君は新人さんだね。僕は此処の常連なんだが、君は初めて見る顔だ」


な、なんて白々しい台詞をっ。

何を目論んでいるんっすか、御堂先輩!


「そ、そうなんですよ。今月頭から入ったばっかりで。当店共々どうぞ宜しくお願いします」

「君は可愛いな。とても花が似合いそうな、愛らしさがあるぞ」