前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―




(先日、泊まりに来てくれた時はすっげぇ元気だったんだけどな)
  


とある土曜日のバイト中。

パシャパシャと皿洗いに勤しみながら思案をめぐらせていると、

「豊福くん。注文取って来てもらっていい?」

背後から声を掛けられた。


水を止めて俺は首を捻る。

そこにはバイトの先輩である鈴木浩実(すずきひろみ)さんが立っていた。

優しいんだけどちょっち気弱な男の人で今年、大学三年生。

背丈は180cmもあるノッポさんだ。


俺を見下ろし、伝票版を差し出して注文を取って来てと片手を出してくる。
 

それは構わないけれど、なんで自分で行かないんだろう?

鈴木さんはまだあがりじゃないと思うんだけど。タオルで手を拭きつつ、俺は理由を尋ねる。


すると鈴木さんが苦手なお客が来たのだと白状してくれた。

平日休日構わず、月に三度以上は来るお客さんらしい。


「僕はあの人の目が怖くて」


泣き真似までされてしまい、俺は苦笑して伝票版を受け取った。

鈴木さんには何度もレジで助けられているから、これくらいお安い御用だ。


「でもそんなに怖いんですか? クレーマーとか?」

「ううん、そんなんじゃないんだけど、僕には怖いんだ。何もしていないのに睨まれるんだよ。ごめんね、後で僕が社割で抹茶シェイク奢ってあげるから」


これだから鈴木さんは大好きだ!

抹茶先輩と呼んでもいいですか?!

楽しみにしていると笑顔を向け、俺はテーブル番号を聞いてそのテーブルに赴いた。

何処のどなたか分からないけど、貴方様のおかげで俺は抹茶シェイクを奢ってもらえるんだ。

怖い客だろうと、俺は営業スマイルで貫き通してやるんだぜ!


二番テーブルに赴いた俺は、


「ご注文はお決まりでしょうか?」


メニュー表を睨んでいるお客様に声を掛けた。


やたら不機嫌に鼻を鳴らすその客は、メニュー表をテーブルに置き、ギッと此方を睨んで「抹茶Aセット」と凄んでくる。