前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



やっぱり自分の手で探さないと。


意気込む俺に、「男らしいな」今のは痺れたとアジくんが褒めてくれた。

いやいや、アジくんの方が二倍も三倍も男前のくせに。

肘で脇腹を小突いたら、「お前ほどでもねぇって」アジくんが照れて脇腹を小突き返してきた。

傍らで見ていたエビくんが大層呆れていたけど、いつものことだったから気にすることはなかった。


「あ。そういえば空くん。最近、竹之内先輩と一緒にいるところ見ないんだけど。彼女、二階堂先輩とよく一緒にいない?」


エビくんが手を叩いて、俺に疑問をぶつけてくる。

もしかして喧嘩でもしているの? エビくんの問い掛けに俺は首を横に振った。


「家のことで忙しいみたいなんだ」


最近、鈴理先輩も大雅先輩も財閥内でゴタゴタしているらしく、慌しい毎日を送っている。

令息令嬢の務めっていうのかな。
二人から直接そう説明された。

大雅先輩から「鈴理を借りるからって泣くなよ」とか揶揄されたし、鈴理先輩からは「寂しい時は電話しろ」襲ってやるから! とかケッタイなことを言われた。


大変だよな、財閥の子供も。


習いたくもないお稽古を沢山習わされるわ。勉強させられるわ。厳しくマナーは身に付けさせられるわ。


お昼ご飯は一緒に食べているけど、それ以外は会う機会が殆どない。

俺も多忙なんだろうなって思ってそっとしている状況だ。


なんか邪魔したら悪いもんな。

 
(ただ…、なんだろう。最近鈴理先輩と大雅先輩に違和感を感じるんだよな)

 
仲を疑(うたぐ)っているわけじゃなく、何かみょーに違和感を感じるんだ。

なんだろうな、この違和感。


眉根を寄せて思案に耽っていると、「あれ」バイト探しているの? と声を掛けられた。

俺はフライト兄弟と一緒に顔を上げて声の方を見やる。

そこにはクラスメートの瀧(たき)さんが立っていた。


クラス内では人気のあるお淑やか系女の子。ぽわほわな癒し系女子なんだ。

んでもって頭が良いから、俺はよく彼女と勉強の話をする。いつまでもお友達でいたい優しい子だ。
 

柔和に綻んでくる瀧さんは俺の机上に放られている雑誌を手に取り、「バイトするの?」俺達に視線を配ってきた。


「空くんが探しているんだって」


エビくんが俺の代わりに事情を説明してくれる。

ふーんと鼻を鳴らす瀧さんは、「その条件なら」駅前の茶屋に行ってみたらいいよ、と耳寄りな話を持ちかけてきてくれた。