一方、スマホの画面をタッチしてそれを机に置いた大雅は、長い足を組み、その太ももの上で頬杖をついた。
「ついに鈴理を娶(めと)るのか」
冗談じゃない、それこそ悪夢だ。
あいつの旦那になった日には何をされるか。
許婚とは昔から気が合わないのだ。
口論ばかり、喧嘩ばかりして、日々を過ごしてきた彼女とは気が合わない。
鈴理の好みも変わっていたため、自分の立場を棚に上げてこいつに彼氏なんてできるのだろうかと思った日もあった。
彼女とはいつだって対等な兄弟分として見ていたのだ。
だからこそあの変人に彼氏が出来たと聞いた時は、やや懸念を抱いたのだが…、彼氏は鈴理好みの男。
そして話せば結構いい奴だと分かった。
必死に鈴理を守った功績もある。大雅は彼を認めていた。
複雑な立ち位置にいる後輩を想い、大雅はまたひとつ溜息をつく。
「変なところで勘がいいからな。豊福。
どーすっかなぁ。いつかはぶつかる問題だと思っていたけど…、俺、受け男にはなれねぇし。
あいつにはこれからも鈴理のお守りをしてもらいてぇし」
でも親父達が簡単に許婚を白紙にする筈もない。
簡単にできるものなら、自分達の喧嘩を見てすぐに白紙にする筈なのだ。
けれど両者の親はそれをしなかった。
喧嘩に苦笑いを浮かべながらも、どこかで期待しているのかもしれない。自分達の関係の進展を。
「無理だ」
おれはあいつを抱けねぇ。
想像するだけでもおぞましいっ!
肌を粟立たせ、大雅は組んでいる足を変えた。
「何事もなく終わってくれたらいいんだけどな。鈴理達が傷付くことなく終われば―――…」



