気遣いを含んだ声音に鈴理は口を閉ざす。
大雅自身、鈴理と空の関係は認めているし、客観的に見ても応援側に立っている。
先輩後輩関係ではあるが彼は空と好(よ)き友人として仲を築き上げているのだ。
純粋に心配しているのだろう。
鈴理と大雅の許婚関係を知りつつ、鈴理の彼氏に立っている空の立ち位置はわりと複雑である。
あまり気にした素振りは見せていないものの、鈴理は先方のことを思い出していた。玲が強く放った、言葉。
“鈴理、豊福が許婚の存在を気にしていないと思っているのかい? まさか、彼が気にしてないとでも本気で思っているのかい?”
―――…。
ダンマリになっていると、『俺等も混乱しているし』ちょっと様子を見よう、と大雅が提案した。
『これを豊福に言えば、ぜってぇショックを受けると思うぞ。あいつってほら、結構気を回すタイプだろ? 俺達のことで変に気を回されるかもしれねぇし。ちと様子見でいこうぜ。俺達も落ち着きてぇ』
「ああ。そうだな。あんたにしては説得力のある台詞だ」
『あん? 俺をなんだと思ってやがるんだよ』
勿論、ミートロール系似非俺様男子だと思っているさ。
やっと零れた笑声を相手にぶつけてやり、鈴理は大雅にまた電話を掛けると告げてボタンに指を掛けた。
携帯を折りたたみながら、
「そろそろスマホにしたいな」
強請ればいつだってスマートフォンにしてもらえるだろうと独り言をぽつり。
しかし幾ら強請っても簡単に自分の意思が通らないこともある。
どんなに相手のことを好きだと両親に告げても、心に響かないことが。
「姉妹の誰より低評価しているくせにっ…、とにかく話を伺わないと」
ベッドから下りた鈴理は携帯を布団に放り、早足で自室を出た。
扉の開閉は荒々しく、付近にいた召使達が鈴理の機嫌に憂慮の念を抱いていたのだが彼女は気付かなかった。



