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【竹之内家・母屋の第一書斎にて】
「二階堂財閥提携の企業がまたM&Aをしたか。買収したようだが、相手は三代川財閥提携の企業、か」
鈴理の父、竹之内英也(たけのうち ひでや)は書斎に設置している大型液晶テレビを睨んで吐息をついた。
リモコンを取って電源を消すと、一人掛けソファーに腰を掛けている妻・竹之内桃子(たけのうち ももこ)に話題を振る。
彼女はこくりと珈琲を嚥下すると、カップをソーサーに置いて何処も不景気ですからね、と溜息。
最近は財閥同士の競り合いが激しい。
小さなところからでも優位に立とうと、財閥同士提携している企業を奪い合っている現状だ。
竹之内財閥も例外ではない。
不景気の波で財閥が消えていく話もよく耳にする。此方と提携している二階堂財閥なら大丈夫と思うが、将来の財閥を見据えるなら繋がりは深めたいところ。
しかし問題は繋がりを深めようとする連結部分。
パイプ役ともいえる将来の二世、三世が連結を強めようとしないのだ。
もっと端的に言えば、我が三女と二階堂次男の仲が芳しくない。
決して嫌っているわけではない。友としては友好的な関係である。
だがその先がなんともかんとも。
二階堂次男は時折彼女を作って親密な関係を作っているとかいないとか。
三女に至っては許婚をそっちのけで彼氏を作っている始末。
それが財閥界で噂立っているのだから困ったものである。
「豊福くんだったかな。彼は好青年で、以前娘の命を必死に守ってくれた子だ。個人情報だが、彼のことを調べさせてもらった限り……、悪い子だとは決して思わない。ああいう子と友人になってくれると、此方としても助かる。安心も出来る。
だがボーイフレンド以上の関係になられてしまってはな」
「鈴理も思春期ですから。なによりあの子は自分に対して劣等感を抱いている。家族評価を気にしている。
お松さんからよくご報告を受けています。少し、鈴理は変わっていますしね」



