【某日晴天 車内にて】
 
 

車窓から見える景色はまるで回り灯籠(どうろう)のようだ。
 
似たり寄ったりの街並みが流れては消え、流れては消え、エンドレス。

古びたたこ焼き屋や、何処に属するか分からないシャッター店。

最先端の流行りを取り入れようと一際目立っている服屋に、人の出入りが激しいコンビニ。


つまらない景色だと溜息をついていると、向かい側に座っているお目付けの蘭子(らんこ)に苦笑された。

彼女は今年で四十になるベテランのお目付けだった。
着物がよく似合う女性で、今日も淡い紺の着物を身に纏っている。
 

なんだとばかりに視線を流せば、「ご機嫌ななめのようですね」現在進行形で抱いている心情を指摘される。
 

不機嫌にならないわけないではないか。

これから向かう場所を考えると胃もキリキリする。ナニが悲しくて、馬鹿げた行事に出席しなければならないのだろう。

まったくもって令嬢も楽ではない。
  

「玲(れい)お嬢様、そう不貞腐れたお顔をしても仕方がないですよ。我慢して出席して下さいな」


今日のパーティーは貴方様の伴侶が見つかるかもしれない、大事なパーティーなのですよ。

毎度パーティーが行われるごとに言われるお決まり台詞にもウンザリだ。
苛立たしく玲は溜息をついて、荒々しく前髪をかきあげた。


「ナニが伴侶だ」


一生決まる筈などない、キッパリツッパリと鼻を鳴らす玲は腕を組んで口を一の字に結ぶ。


伴侶なんていらない、自分がバリバリと未来の財閥のために仕事をすればいい話だ。


「そう言われましても、いずれ後継者が必要となります。ご家庭だって欲しいでしょう?」


養子でも取ればいい、フンと鼻を鳴らす玲は舌を鳴らして大反論。