「先輩?」


声を掛けると、いっぺんして先輩が笑顔を作った。

んでもって俺に着替えて来いと命令してくる。

覗かないから着替えて来い、妙に熱を込められて命令されてしまう。


「えーっ、いいっすよ。別に制服を汚さなければいい話ですし」


「あたしは着替えて、空は着替えていないじゃおかしいだろ。着替えて来い。覗かないから着替えて来い。心配ならトイレで着替えて来てもいい。
とにかく着替えてこい。それともあたしに着替えさせて欲しいか?」


ほらほら行って来る。

あたし様に命令と脅しの両方をぶつけられた俺は、


「じゃあ着替えてくるっす」


貞操を守るために従順になった。

肉の入った箱を台所の流し台横に置き、すぐ戻ってくるからと先輩に告げる。

行って来い、手をひらひら振る先輩の微笑が妙に怖い。まさか覗くつもりじゃ。


うーんっと首を傾げながら俺は着替えのジャージを持って洗面所に。


まさか俺の背を見送った彼女が颯爽と携帯を取り出していたなんて、俺は知るよしもなかった。

 

「もしもしばあやか。大至急準備をして欲しい。ああ、一刻を争う。それから空に気付かれないよう頼む。空の気持ちを無碍にはできないからな」




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