ダンッ、音を立てて湯飲みを置く先輩に俺はツッコミを入れた。
我慢は体に良くないとかほざく彼女だけど、少しは忍耐力をつけて欲しいもんだよ。俺の身が持たないって。
静寂な空間じゃいずれまた甘い雰囲気到来、んでもって俺の貞操大ピンチ。ついでに自尊心も砕かれかねないからテレビのリモコンを取って電源を入れることにした。
夕方のワイドショーがあっている。
この時間帯にテレビを見ることが無いという鈴理先輩は、ワイドショーのキャスターを興味津々に見つめていた。
「あの顔は何処かで見たことあるな」
独り言に、「民間放送のキャスターだった人っすよ」今は全国放送のキャスターになっている実力派キャスターだと教えた。
俺、結構テレビっ子だから芸能人の顔とか覚えているんだよな。
今流行のアーティストとか政治家も大半は分かるよ。
暇な時はテレビをよく観ているし。
電気代が無駄だって点があるけど、勉強バッカしても頭が煮えるだけだしな。テレビは気を紛らわすのに丁度いい。
俺達は談笑を交えながらつらつらと流れていくニュースに目を向けていた。
遊びに来てくれたのにワイドショーを見ていていいのかってツッコまれたら、まあ、話題づくりにいいんじゃない? って答える。
俺の家、先輩の家みたいに物が豊富じゃないんだよ。退屈しのぎになるものがあんましない。
貰ったケータイ小説の話題を出してもいいんだけど、俺、まだ全部読んでないんだよな。一週間に三冊が限度だ。
「なんだか庶民の生活に溶け込んでいる気がするな」
ワクワクするぞ、鈴理先輩がポテチに手を伸ばして綻ぶ。
微妙な気分になる感想だけど、彼女が嬉しそうだったから俺は目尻を下げて良かったと一笑する。
先輩が喜んでくれるなら何よりだ。呼んだ甲斐もある。
「お母様はいつ頃、帰宅されるんだ?」
「母さんっすか? 今日は早いと思うっすよ。
先輩が泊まりに来ることを喜んでいましたし。父さんも夕飯を楽しみにしているから、母さんは6時前。父さんは8時前には帰宅すると思いますっす」
ズズッと茶を啜り、嚥下して俺は答える。
「空。夕飯の下ごしらえをしておかないか?」
ある程度、支度をしておけばご両親も楽だろ?
先輩の提案に俺はキョトン顔を作る。
嬉しい申し出だけど、先輩は客人だ。
夕飯の支度をさせるわけにはいかないよな。



