俺は眉尻を下げて、返事した。
先輩相手じゃなかったら頑なに拒んでいる、と。
うそつけと即答されてしまった。
こんこんっと額で俺の背中を小突き、
「玲に押し倒されているではないか」
不満に染まった声が飛んでくる。
そりゃあ、向こうの押しが強いからっすよ。
なしてあんなに押しが強いんだろう? 恐るべし攻め女だよな。
それに俺と先輩だってそうだったでしょ。
あの時の先輩、俺が必死こいて逃げているっていうのに、それさえ楽しんで迫ってくるんだから。
いやそれは今でもそうだけど。
特別だと知ってもらいたいから、巻きつかれている腕を引き剥がし、振り返って身を屈める。
さっきまで背中にこすり付けていた額に唇を落とすと、面食らった先輩の顔がそこにはあった。
コンマ単位で表情がしかめっ面(という名の照れ顔)になり、荒々しく頬に手を添えて唇を食まれた。
果たして本日何度目の口付けだろう。
戯れている俺達が煎茶を飲む頃には、蒸らしているお茶っ葉が苦味と渋味を大量に放出させ、とても飲みにくい茶になっていた。付け加えてぬるい。熱々だった筈なのに人肌並になっている。
おもてなしとして大事に取っていたポテトチップスを先輩と一緒に食べながら、音を立てて茶を飲む。
「渋いな」「っすね」「蒸らし過ぎだな」「っすね」「空は甘いから丁度いいかもしれん」「…キスが甘いんっす」「………」「………」
「空、あんまり欲情させるな! 襲いたくなるだろ!」
「センッパイは少し我慢ってものを覚えましょうね!」



