帰宅路から散々男のプライドを叩き壊してくれたんだ。もう充分だと思うんだけど!
勿論鈴理先輩は満足、しているわけもなく、
「だったら鳴かせるまでだ!」
と握り拳を作って行動を起こした。
な、なにをするつもっ、「ぶっ飛べよ空」ふ、不吉で物騒なことを仰らないで下さいっす! ぶっ飛べって何をするつもりっすか?!
ゲッ、しかもまたディープキスっすか?!
目論みのあるディープキスをすると痛い目に遭う…、遭う…、あう…、……。
息継ぎなしのディープキスは本気のものだと感じ取れる。
重力に従って落ちてくる先輩の髪が頬を擽ってくる。
呼吸が続かない俺は眉根を寄せて限界を示してみるけど、先輩は呼吸さえ食らうような情熱的なキスをしてきた。
何度も何度も交わしてきた。
熱いキスを交わしていると力が抜けてくる。
「んっ…」
思考も感覚も分からなくなるほどキスを交わし、交わして、舌が痺れてきて。
彼女はようやく解放してくれる。
気道に入ってくる酸素を忙しく取り込む俺に目をくれず、さっき弄くっていた耳を食む。構う余裕がないから好きにさせた。
拘束していた彼女の片手は俺の手を振り払って再びボディタッチ。
「うっ」自然に漏れる声はまだ驚きしか含まれていない。鈴理先輩も分かっているのか、手は脇腹に添えて愛撫。食んでいる耳をより深く銜えて、次の瞬間。
「―――っ?!!!」
さほど時間も経たず、ヤカンの沸くけたたましい音が室内を満たした。
早く火を止めろとばかりにヤカンは怒号を上げている。
ガス代が勿体無いとガスコンロを止めた俺の足取りは覚束ない。
ついでに顔は顔面紅潮だ。
シュッシュッ。
蒸気を噴き出しているヤカンに目を向け呆然と佇んでいた俺は次第次第に思考が回り、ありえないと額に手を当て嘆いた。
またヤラれたっ、ヤラれちまったっ、鳴かされたっ。
もう駄目だ。
俺は男としての価値さえ彼女に奪われている気がする!
「まさかディープで翻弄させた後に、耳を重点攻撃してくるなんて」
「ぶっ飛ばせるって」こういうことだったんっすか、ガックシ肩を落とす俺の背後で、「しまったな」録音を忘れていた、うっかりしていたと先輩が嘆いている。



