傍から見れば攻められている俺はヘタレの腰抜けだと言われるだろうし、先輩は雄々しい肉食だと言われるだろう。
まったくもってそのとおりだけれど、俺達カップルは男女逆転ポジションで落ち着いている。
納得せざるを得ないというか(主に俺がな!)、先輩が望んでいるならしゃーないって割り切っているわけだ。
世間からすると異色でも、俺はこの関係を否定するつもりはない。
カレカノの俺達が納得しているならそれでいいと思っているんだけど。
「急にどうしたんっすか?」
俺は彼女の発した言葉の意味を尋ねる。なんだか先輩らしくないんだけど。
「別に何も」なんとなく言いたくなったんだ、彼女は含み笑いを浮かべて首筋に甘噛みをしてきた。
何もないならいいんだけど、釈然としない。
心に一点の曇りが出てくる。
この曇りは俺自身の不安なのかもしれない。
漠然とした不安を払拭するため、先輩の気持ちに踏み込もうと口を開く。
すると、まるでそれらを制するようにリップ音が聞こえた。首筋に走る慣れた痛みに、「また付けましたね?!」俺は頓狂な声を上げる。
しかも絶対制服じゃ隠せない目立つ場所につけてくれるもんだから確信犯と罵るほかない。困るのは俺なのに!
ふふんと鼻を鳴らす彼女は悪戯げに唇を耳元に寄せた。
吐息を吹きかけてくる動作に硬直。
こ、ここここのパターンはまずっ、ぎゃぁああ?! 耳を食まれたぁああ?!
縁をなぞってくる先輩に全力でタンマをかける。
でも聞いちゃくれない。
「確か空の耳は」
性感帯が強いよな、と意地悪く笑ってくる。
既に知っている情報をわざとらしく復唱する先輩は、
「嬌声が聞きたくなってきた!」
とんだ発言と共に何度も右耳を食んでくる。
なしてこのお嬢様は場所時間を問わず、自分の欲望のままに動こうとするんだろうか! こんの肉食のあたし様め!
「駄目ですって!」肩に手を置いて押し返そうとすれば、「そう言って」期待しているんだろ? と、押し返された。
んなわけないでしょーが! まるでケータイ小説の俺様×天然娘のような物語を展開じゃないか、これ!
俺、一昨日くらい俺様御曹司の話を読んだよ…って、あー…ケータイ小説は先輩の参考書そのものだった。
よってこのツッコミは成立しない!



