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「おはよう、空。
今日はあたし、あんたと徒歩で家に向かうことにしたぞ! とても楽しみにしているからな!」
 
 

あくる日の先輩はすこぶる機嫌が良かった。

俺のお誘い効果がいかんなく発揮されたらしい。


登校した俺を昇降口で待ち構えていた鈴理先輩は、「あんたと下校デートだ!」挨拶代わりに下校の話題を振ってきた。


いつも車で送り迎えされている竹之内お嬢様三女だけど、俺のために帰りのお迎えはいらないと言ったみたいだ。

とびきりのニッコニコ笑顔で一緒に歩いて帰るとのたまってくる。


「そうっすか」でも俺の家、遠いっすよ、元気ハツラツの彼女に向かって俺は目尻を下げる。

「構わないぞ」寧ろ、下校デートをしてみたかったのだ、鈴理先輩はハイテンションで答えた。


うん、良かった。

いつもの先輩に戻ってくれているみたいだ。

はしゃぎように微笑ましさを感じるぞ。誘った甲斐もあるってもんだよな。

ほんっとここのところの鈴理先輩、様子がおかしかったしな。


元気になってもらって俺も「空の家でセックスはできるのか?」



………。
 


笑顔を貼り付かせた俺は、上履きに履き替えながら彼女に忠告を述べることにした。
 
  
「先輩。俺の家は狭いっす。両親とは常に至近距離っす。したがっていかがわしいことはできません。いいっすか?」

「空のご両親が帰宅する前にヤることをヤればいいではないか! 時間に追われながらするセックスはな、とても燃えるそうだぞ! あたしは必死になっている空を見たいのだ。
うむ、あの時の嬌声も耳から離れないし、是非ともあたしは」


「センッパイィイイ! 頼みますから…、頼みますから、俺の家では健全にしましょう! 親にいたらんことをしているなんてば、ば、ばれたら、おぉお俺、顔向けもできないっすよ!」

「いたらない? まだセックスしてないでは「とにかく健全重視でお願いしますっす!」
 
 
ぶすくれる鈴理先輩は、「じゃあこっそりお触りは良いだろ?」なんて爆弾発言。

腰や体を触ったりするだけなら許容範囲だろ? とかなんとか、言ってくれる先輩だけど、貴方様の触る行為は一々々々ねちっこいんっすよ。

できることなら却下したいところっす。