ディスプレイ画面に表記された名前に、噂をすればなんとやらだと微苦笑してボタンに指を掛ける。
『こんばんはっす』
聞こえてきた声は元気の塊そのもの。
英会話お疲れ様っす、そう言葉を投げ掛けてくれる彼は何をしていたのかと尋ねてきた。
ちなみに今自分は勉強にうんぬん苦しんでいたところだったと報告してくる。
やっぱり化学は意味が分からない、嘆いている彼に一笑する鈴理は返答した。
「丁度良かった空。今な、ばあやに叱られていたところだったのだ。夕飯をいらないと拒んだだけなのに」
『ちょ、夕飯を拒むと言いました? なああに馬鹿なことをしてるっすか! イイっすか、食べられるってのは有り難いことなんっすよ! 具合が悪いとかなら話が別っすけど』
「うむ、ダイエットをしようかと」
『うっし、先輩。明日は開口一番に俺もお小言を言ってやるっす。食べ物の有り難味を知りなさいっす!』
ヤンヤン喚いてくる彼氏は予想通りの言葉を吐いてきた。
彼に心配と叱られたくて自己申告した状況に微笑していると、『ああそうだ』忘れるところだったとお小言をやめて、話題を切り替えてくる。
『鈴理先輩、この一週間で空いている日を教えて下さいっす』
珍しい、彼からのデートのお誘いだろうか?
鈴理はテンションを上昇させながら、「ラブホにでも行くか?」とノリノリで言う。
『なんでそっちになるんっすか』
やや呆れる彼は、チガウチガウと否定。
デートの誘いでもないと言った。
おや、それでは一体…。
『あのっすね、母さんがハガキの懸賞ですき焼きセットを当てたんっすよ! 凄いでしょ、すき焼きっすよ! すき焼き!』
鈴理にとってあまり珍しい食べ物ではないのだが、『牛肉が詰まってたんっすよ!』大興奮している彼の気持ちを察して、おめでとうと言葉を掛けてやる。
そんな彼は家族にお願いして、今日食べる予定のすき焼きを延長したのだと告げてきた。
何故かといえば家に彼女を呼びたくって…、と照れ照れで笑った。
そう、彼は鈴理を夕飯に招こうとしているのだ。



