前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



固く誓う自分にせいぜい頑張れとおどける許婚、悔しくてまた膝を叩いた。

やっぱり甘受してくれる許婚は、「お前って案外男を見る目があるんだな」と茶化した。


許婚もお墨付きの彼氏だよ、励ましてくれる許婚の優しさに涙の量を増やしたのは自分だけの秘密だったりする。


結局、彼は大事に至らず、後日病室で見舞いに来る自分に微笑を向けてくれた。

それがホッとしたり、片隅で悔しさを抱いたり。

つらつら述べようと思っていた悪口(あっこう)の毒気が消散されてしまった。


けれど、向けられた笑みで強く胸に刻んだ。

今度こそ、今度こそ、騎士になるのだと。
 
 



(―――…そう、今度こそ空を守ると決めていたのに、まさか玲にあんなことを言われるなんて思ってもみなかったな)
 
 
とある日、英会話から帰宅した鈴理は夕飯を取らず、愛犬のアレックスの下で一戯れ。

その後、シャワーを浴びて寝巻きに着替えると、携帯を片手にお気に入りの水辺のテラスへ。

縁に腰掛け、携帯を弄りながら素足でちゃぷちゃぷと水面に触れた。

気持ちがささくれ立った時はいつも此処に来るようにしている。


澄んだ水と静かに広がる波紋が自分を慰めてくれるから。


大きな溜息をつき、携帯を閉じてちゃぷちゃぷと水で遊んでいると「お嬢様」声を掛けられる。
 

顔を上げれば教育係のお松が背後になっていた。

第二の母とも言えるお松は、夕飯を取っていないと知ったのか、ちゃんと食事はするようにとお小言を頂戴してしまう。

食べたくないとそっぽを向けば、「駄目です」ちゃんとお食べになって下さいと隣に腰をおろしてきた。


ぶうっと脹れる鈴理に、「我が儘ばかり言ってると」空さまに言いつけますよ、と脅してくる。

それは困った。

彼の耳に入れば、口喧しく「食べ物の有り難味を知りなさいっす!」と言われることだろう。