「すべて貴方のお心のままに。―…俺の王子さま」

 
  
微苦笑交じりに言えば、満面の笑顔が向けられた。


「なんでそんなに」


空は可愛いんだぁあっ、食っちまいたいっ、とかなんとか言われてぎゅうっと抱き締められるんだけど、ちょ、痛いっす先輩! 力強いっす! 苦しいっす!

可愛いとか嬉しくない。
寧ろ先輩の方が可愛いッ…、ぬわわぁああああ?!


「せ、先輩っ、手、手っ。腰っ、撫で回さないで下さいっす! ぞわぞわするっす!」


「うむ、おかしいと思わないか? 空。女の腰を触る事が楽しい男がいるのならば、男の腰を触る女がいてもおかしくないと思う。
なのに、少女向けの漫画や小説、挙句の果てにケータイ小説等々ではそんな描写がまったくない。

世の中は不思議な事だらけだ。
男女平等を唱えるならば、こういう行為も平等だろ?」


「だったら男の俺がこう言ってもおかしくないっすよね。セクハラ反対っす!」


「馬鹿だな空。あたしの行為は許されるんだぞ。何故だと思う? 例えるならば、そう愛犬のアレックスを撫で回すのと一緒だ。幾ら愛犬を撫でてもそれはセクハラにならない。

同じように空を撫で回しても、あたしの行為はセクハラにはならない。
あんたはあたしのもだろ? たった今、肯定の返事をしたではないか!」


「こ、肯定しましても俺には人権というものが存在しておりましてっ…。
愛犬と同レベルにされるのはっ…、せめて公の場でのセクハラは勘弁して下さいィイイイ!」
 
 
悲鳴を上げる俺を無視してくれる肉食お嬢様は、公共の場で堂々とセクハラという名のお触りおさわり。