微動している瞼に唇を落とし、何度も大丈夫だと気を落ち着かせるために髪を梳いてやる。
成されるがままの彼は、甘んじてそれを受け止め、不意に呟くのだ。
「先輩、何処にも行かないで下さいっす。ひとりにして欲しくないっす」
今ひとりにされたら、崩れてしまっている心が砕けそうだと訴えてきた。
「馬鹿だな」ひとりにするわけないだろ、鈴理は相手に微笑し、絶対にひとりにしないことを約束する。
疑っているのか、彼は「絶対っすよ」と念を押してきた。
勿論だと頷けば、「絶対っすからね」まだ念を押してくる。
あまりにもしつこいものだから、
「もしやエッチでもしたいのか? ならば、そう最初から言えばいいのに」
と茶化してやった。
答えなどとっくに分かっているものの、いつものように攻めてやりたくなるのは彼を思う気持ちから。
即答で「ノーっす」と拒絶されてしまい、「それでこそ空だ」鈴理は笑声を漏らした。
やや拗ねた顔を作るものの、彼はやっと安堵したように約束だと綻んで腕の中におさまってくれる。
「先輩はあったかいっすね。安心する…、落ち着くっすよ」
子供のように笑う彼を、これからも守り続けていきたいとあの時、強く願い思った。